群像2024年8月号(7月5日発売)
特別定価1550円
【一挙掲載】古川日出男 紗倉まな | |
今号巻頭は、古川日出男さん「うつほ物語」190枚c。須磨の寓居から「古川マジック」が美しく炸裂し、私たちは時空をゆらぎ物語の起源まで運ばれることでしょう。「うつほ」のつぎの作品が「うつせみ」、というのは偶然なのですが、偶然とは思えませんでした。紗倉まなさんの中篇「うつせみ」を一挙掲載します。整形を繰り返す祖母とグラビアアイドルの孫。姿形と存在のはざま。 *** 古川日出男さん「うつほ物語」 須磨の寓居にうつほの首巻「俊蔭」のみ運び入れた光る君は、筆を通して七絃の琴の一族の歴史を絵に描きはじめる——。時空間が超凝縮されたとき、私たちはそこに物語の起源を見る。 * 紗倉まなさん「うつせみ」 整形を繰り返すばあちゃんが目指すのは、どんな顔なんだろう。河川に囲まれた街で、辰子は鏡に映した自分を見つめる。 *** |
【小特集・豊永浩平】豊永浩平 武田砂鉄 倉本さおり | |
月ぬ走いや、馬ぬ走い」で群像新人文学賞を受賞した、豊永浩平さんの小特集を組みました。本誌連載陣の武田砂鉄さんを聞き手にしたインタビュー「歴史からたぐり寄せる「言葉と響き」」。倉本さおりさんに鋭く解読していただいた書評「生を掘削していく語り」。豊永さんによる受賞作に対してのエッセイ「ぼく(ら)の亡霊たち」の3本立て。単行本とあわせてお読みいただき、若き才能のデビューに立ち会っていただけたらうれしいです。 *** 豊永浩平さん、聞き手:武田砂鉄さん「歴史からたぐり寄せる「言葉と響き」」 群像新人文学賞受賞作『月ぬ走いや、馬ぬ走い』はいかにして生まれたのか。歴史といまを接続し言葉を紡ぐ、壮大な試みの出発点。 * 倉本さおりさん「生を掘削していく語り」 * 豊永浩平さん 本の名刺「ぼく(ら)の亡霊たち」 *** |
【創作】くどうれいん 高橋源一郎 張天翼 長野まゆみ | |
創作は充実の4作。くどうれいんさん「残ること」、高橋源一郎さんの連作「オオカミの」、長野まゆみさん「晴、時々レモン雨」にくわえて、翻訳がひとつ。「日常生活に潜む息苦しさを絶妙な比喩と繊細なタッチで浮き上がらせ、多くの読者の共感を得てきた」(訳者解説より)中国の作家・張天翼さん「春の塩」は、中国の読書サイト「豆瓣」で2022年国内フィクション第1位となった『如雪如山』からの一篇です。訳者である濱田麻矢さんの解説とともに。 *** くどうれいんさん「残ること」 タケトに作るはずだったミートソーススパゲティの材料が、いまだに冷蔵庫にあるのが嫌で、春巻きの皮でラザニアを作っている。 * 高橋源一郎さん「オオカミの」 ろしあというクニの「ホン」を「チョウセイ」するために、わたしは「ナカのヒト」を知る準備をする。 * 張天翼さん、濱田麻矢さん訳・解説「春の塩」 わたしはすなわち彼女だから――。妊娠・出産をする彼女を、わたしは小さく見守っている。「普通」という言葉に押し込めるにはあまりにも苦しく、孤独な経験。中国最大の読書サイト「豆瓣」で、国内フィクション第一位に選ばれた『如雪如山』からの一篇。 * 長野まゆみさん「晴、時々レモン雨」 クラフト作家である真帆さんの工房を訪ねたぼくは、母が父ではない人の骨をメモリアルグラスにしようとしていたことを知る。 *** |
【批評】田村正資 【解説翻訳】ケイト・ザンブレノ 西山敦子 【論点】シェリーめぐみ | |
QuizKnockの一員として活躍する一方で哲学の研究者の顔を持つ田村正資さんの「クイズが人生と交錯するとき―江藤淳、スラムドッグと「君のクイズ」」。文芸誌で初めての批評となります。ニューヨーク・タイムズなどで紹介され話題になっている金井美恵子さんの『軽いめまい』。ケイト・ザンブレノさんによる解説エッセイを、西山敦子さんの訳で特別掲載します。今号の「論点」は、在米ジャーナリストのシェリーめぐみさんによる「私たちは疲れ果てている―親パレスチナ運動と大統領選の行方」。前回のアメリカ大統領選のときにも寄稿いただいたシェリーさんに、今号と選挙直後の1月号で現地リポートをお願いします。 *** 田村正資さん「クイズが人生と交錯するとき――江藤淳、スラムドッグと「君のクイズ」」 頭を悩ませ導き出した答えに、「ピンポン」と正解のブザーが鳴る。ゲームの勝ち負けを超えて、人生を巻き込むエンターテインメントである「クイズ」に秘められた、不遜な二面性とは。 * ケイト・ザンブレノさん、西山敦子さん訳「金井美恵子『軽いめまい』英語版・巻末エッセイ」 『軽いめまい』英語版はニューヨーク・タイムズやアトランティックで紹介されるなど話題になっている。『ヒロインズ』の著者による解説エッセイを特別掲載する。 * シェリーめぐみさん「私たちは疲れ果てている――親パレスチナ運動と大統領選の行方」 ガザでの停戦を求めて、若者たちが声を上げた。大統領選挙が迫るアメリカで、いま何が起きているのか。 *** |
【『文化の脱走兵』刊行記念書評】川上弘美 【本の名刺】岸本佐知子 【最終回】岩川ありさ 竹田ダニエル 三木那由他 【追悼・野口武彦】吉村千彰 | |
本誌連載を単行本化した奈倉有里さん『文化の脱走兵』の刊行を記念して、川上弘美さんに書評「人間」をいただきました。「本の名刺」は、岸本佐知子さん『わからない』。岩川ありささん「養生する言葉」、竹田ダニエルさん「世界と私のA to Z」(近々装いを新たに連載開始予定)、三木那由他さん「言葉の展望台」が最終回を迎えています。それぞれ単行本化を楽しみにお待ちください。野口武彦さんが逝去されました。吉村千彰さんに追悼文をお願いしました。謹んでお悔やみを申し上げます。 *** 川上弘美さん「人間」 * 岸本佐知子さん「本の名刺」/『わからない』 * 岩川ありささん「養生する言葉」 わたしはいつも死にたかった。約一年半前、この連載の原点となる文章はそう始まった。自分自身に手当てをし耳を傾ける。他者との境界に気がつき、対話のなかであなたに出会う。惑いながら、あなたは恢復の過程にある。 * 竹田ダニエルさん「世界と私の A to Z」 アメリカのZ世代の生き方や価値観から、絶望と未来が見える。地続きの私たちはこれからも考え続ける。 * 三木那由他さん「言葉の展望台」 私とあなたは社会を背負って向き合いながらコミュニケーションを続けている。新しい関係が生まれる可能性を信じて。 * 吉村千彰さん「三十七年後の「逝く花」」 *** |
〈一挙掲載〉
〈創作〉
〈小特集・豊永浩平〉
〈批評〉
〈解説翻訳〉
〈論点〉
〈『文化の脱走兵』刊行記念書評〉
〈随筆〉
〈『文化の脱走兵』刊行記念書評〉
〈追悼・野口武彦〉
〈最終回〉
| 〈連載〉
〈書評〉
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