群像2024年5月号

【短篇小説特集・休暇と短篇。】今村夏子 片瀬チヲル くどうれいん 小池昌代 高瀬隼子 武塙麻衣子 長野まゆみ

短篇小説特集「休暇と短篇。」 今村夏子さん、片瀬チヲルさん、くどうれいんさん、小池昌代さん、高瀬隼子さん、武塙麻衣子さん、長野まゆみさんにご寄稿いただきました。GW前の発売号ということもあり、休みにどれからでも、「休暇と随筆。」とともにお読みください!

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今村夏子さん「三影電機工業株式会社社員寮しらかば」

子供の頃から憧れていた寮生活を、二十八歳で送ることになった。念願叶って、ではなく、そうせざるを得なかったからだ。

片瀬チヲルさん「かわいい獣」

自称スナフキンの恋人が、別れを切り出して消えてしまった。桃音は合鍵を持って彼の家に向かう。

くどうれいんさん「背」

朝は、ベランダに出て煙突の煙を眺めてから出勤する。展示室のすべてをしまうまの目で見つづける。

小池昌代さん「魂ぎれ」

幾千年の時をこえて、いまここで「あなた」と出会う奇跡。大切な家族をひとりずつ看取り、老いてゆく我が身も燃え尽きようとするそのとき、彼女に寄り添うのはほかでもなく――。

高瀬隼子さん「いくつも数える」

多趣味で人望の厚い五十歳の天道課長。その結婚は職場に波紋を呼ぶ。

武塙麻衣子さん「とうらい」

大きな三毛猫と無口な黒猫、結婚して七年になる健人とここに暮らし始めて五年になる。些細な気がかりのことを思うと時々、夫との会話は少し嚙み合わない。

長野まゆみさん「もう森へ行かない」

顔も覚えていない実母の墓参りに向かうぼくは、「ぼく」の一人称をつかって話す一実さんと合流した。彼女が唄うメロディに涙がでるのはなぜだろう。


【小特集・ルシア・ベルリン】ルシア・ベルリン 岸本佐知子

短篇特集のほかに、ルシア・ベルリンの短篇3本を掲載。『掃除婦のための手引き書』『すべての月、すべての年』に続く、刊行準備中の新邦訳作品集『楽園の夕べ』(仮題)からの先行掲載となります。翻訳と解説は岸本佐知子さん。単行本に先んじて、ぜひご注目ください。

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ルシア・ベルリン、岸本佐知子さん・訳「日干しレンガのブリキ屋根の家」

マヤがミュージシャンと再婚し、子供たちを連れて引っ越したのは、荒れはてた土地に建つ古い家だった。

ルシア・ベルリン、岸本佐知子さん・訳「オルゴールつき化粧ボックス」

当たりの名前を買った人が化粧ボックスをもらえるくじつきカード。七歳のわたしとホープは、家を一軒ずつまわってカードを売った。

ルシア・ベルリン、岸本佐知子さん・訳「妻たち」

彼にかなう男に会ったことある? デッカとローラが酒を飲みながら話すのは、二人がかつて結婚していたマックスについてだ。

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【中篇一挙】砂川文次

中篇一挙掲載は砂川文次さん「オートマタ・シティ」。群像では芥川賞受賞作『ブラックボックス』(文庫化されました!)以来の作品です。「嘘」と「ごまかし」に満ちた政治のことを考えさせられる本作も、お楽しみください。

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砂川文次さん「オートマタ・シティ」

行政監査院監査官補のコマツは、過去に立ち消えになったはずの「新東京特別市」計画の調査を命じられる。一つの文書を追った先に見えたこの国の正体――。

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【対談】中村佑子×村上靖彦 【本の名刺】中村佑子

マルジナリア書店での対談、中村佑子さん×村上靖彦さん「ヤングケアラーの哲学」を掲載します。一般化することのできない「ヤングケアラー」という言葉が取りこぼすものからの対話。『わたしが誰かわからない ヤングケアラーを探す旅』中村さんの本の名刺とあわせて。

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中村佑子さん×村上靖彦さん「ヤングケアラーの哲学」

語りの「読み」の方法から、レヴィナスの自己論まで。一般化できないヤングケアラーの問題に、私たちはどう向き合うべきなのか。

中村佑子さん「本の名刺」/『わたしが誰かわからない ヤングケアラーを探す旅』

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【不定期エッセイ】高山羽根子 【最終回】鎌田裕樹 諏訪部浩一

高山羽根子さんの不定期野球エッセイ「いま、球場にいます」は第3回を掲載。鎌田裕樹さん「野良の暦」、諏訪部浩一さん「チャンドラー講義」がそれぞれ最終回を迎えています。単行本もご期待ください。第67回群像新人文学賞の予選通過作品を発表しています。

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高山羽根子さん「いま、球場にいます」

NPBのシーズンオフは、台湾で開催されたアジア野球選手権大会へ。季節は流れ、日本プロ野球のキャンプ情報を追う。そしていよいよ球春到来――。

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鎌田裕樹さん「野良の暦」

京都・大原での農業見習いをまもなく終え、故郷の千葉へ。修業の日々を綴ったエッセイ完結。

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諏訪部浩一さん「チャンドラー講義」

フィリップ・マーロウを世に出し、シリーズを書き続けた孤独な作家は、『ロング・グッドバイ』以降をどう生きたのか。

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もくじ

〈短篇小説特集・休暇と短篇。〉

  • 「三影電機工業株式会社社員寮しらかば」今村夏子
  • 「かわいい獣」片瀬チヲル
  • 「背」くどうれいん
  • 「魂ぎれ」小池昌代
  • 「いくつも数える」高瀬隼子
  • 「とうらい」武塙麻衣子
  • 「もう森へ行かない」長野まゆみ

 

〈小特集 ルシア・ベルリン〉

  • 「日干しレンガのブリキ屋根の家」
  • 「オルゴールつき化粧ボックス」
  • 「妻たち」
  • ルシア・ベルリン、訳・解説:岸本佐知子

 

〈中篇一挙〉

「オートマタ・シティ」砂川文次

 

〈対談〉

「ヤングケアラーの哲学」中村佑子×村上靖彦

 

〈休暇と随筆。〉

  • 「イボが治らへん」大阿久佳乃
  • 「熱のない赤」オカヤイヅミ
  • 「やさしい手と痛い手」頭木弘樹
  • 「私はずっと春の部屋」君島大空
  • 「花壇の思い出」鈴木咲子
  • 「かんぴょう巻きを、ひとくち」チヒロ
  • 「リズムから考える小説」つやちゃん
  • 「殴られても目をつぶらない」土門 蘭
  • 「アマチュアリズムと成熟」西森路代
  • 「勝手口からのぞく政治の世界」宮原ジェフリー
  • 「チューニング。」向井 慧
  • 「液体への羨望」務川慧悟
  • 「すかいらーくのコーンポタージュ」山内朋樹

 

〈不定期エッセイ〉

「いま、球場にいます」高山羽根子

 

〈本の名刺〉

中村佑子『わたしが誰かわからない ヤングケアラーを探す旅』

 

〈最終回〉

  • 「野良の暦」〔19〕 鎌田裕樹
  • 「チャンドラー講義」〔12〕 諏訪部浩一

〈連載〉

  • 「Wet Affairs Leaking」〔5〕阿部和重
  • 「無形」〔11〕井戸川射子
  • 「B」〔7〕松浦寿輝
  • 「鉄の胡蝶は夢に記憶は歳月は彫るか」〔69〕保坂和志
  • 「不浄流しの少し前」〔2〕鈴木涼美
  • 「第ゼロ次世界大戦」〔3〕鹿島 茂
  • 「誰もわかってくれない――なぜ書くのか」〔3〕武田砂鉄
  • 「デビュー前の日記たち」〔3〕宮内悠介
  • 「天皇機関説タイフーン」〔4〕平山周吉
  • 「日吉アカデミア一九七六」〔5〕原 武史
  • 「「宗教の本質」とは?」〔5〕釈 徹宗×若松英輔
  • 「ハザマの思考」〔8〕丸山俊一
  • 「セキュリティの共和国――戦略文化とアメリカ文学」〔9〕新田啓子
  • 「星になっても」〔9〕岩内章太郎
  • 「ゲは言語学のゲ」〔10〕吉岡 乾
  • 「養生する言葉」〔10〕岩川ありさ
  • 「言葉と物」〔7〕福尾 匠
  • 「海をこえて」〔9〕松村圭一郎
  • 「群像短歌部」〔11〕木下龍也
  • 「星沙たち、」〔11〕青葉市子
  • 「世界の適切な保存」〔23〕永井玲衣
  • 「言葉の展望台」〔33〕三木那由他
  • 「世界と私のA to Z」〔25〕竹田ダニエル
  • 「現代短歌ノート二冊目」〔43〕穂村 弘
  • 「日日是目分量」〔45〕くどうれいん
  • 「星占い的思考」〔50〕石井ゆかり
  • 「〈世界史〉の哲学」〔156〕大澤真幸

 

〈書評〉