群像2023年7月号(6月7日発売)
特別定価1650円
【一挙掲載】中村文則 【新連載】井戸川射子 | |
今号巻頭は中村文則さんの一挙掲載「列」。「群像」での創作掲載はじつに12年ぶりのこと。人間の欲望の奥を見つめる中村さんの新たな代表作です。 その列は長く、いつまでも動かなかった。しかし、私はその列から出ることができない。研ぎ澄まされた文章で人間の欲望の奥を見つめる、著者の新たな代表作。(中村文則「列」)
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『この世の喜びよ』で芥川賞を受賞した井戸川射子さんの初連載「無形」が始まります。この世界にひそむ詩情にまなざしをむける井戸川さんの新境地をお楽しみください。 みんなこんなに目を凝らして、ものと対峙しているのだろうか。海沿いの古い団地で暮らすオオハルの目に映る人々のいとなみと風景。この世界にひそむ詩情にまなざしをむける、新芥川賞作家の初連載。(井戸川射子「無形」) |
【批評総特集】岩川ありさ 戸谷洋志 長瀬海 福尾匠 松村圭一郎 石川義正 河南瑠莉 工藤庸子 沢山遼 邵丹 | |
まずは、新連載が一気に五つ。岩川ありささん「養生する言葉」、戸谷洋志さん「メタバース現象考 ここではないどこかへ」、長瀬海さん「僕と「先生」」、福尾匠さん「言葉と物」、松村圭一郎さん「海をこえて」がスタートします。
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あまりにも衝撃的な出来事を経験した時に生じる精神的外傷。靄がかかったまま、しかし強烈にそこに「ある」トラウマを捉えるために。物語と出会い、生を養う言葉を探す、やわらかな気配で生き延びを支える試み。(岩川ありさ「養生する言葉」) メタバースとは単なるバズワードではない。その背景には、古代から現代に到るまで反復されている「根源的な欲望」が胎動している。(戸谷洋志「メタバース現象考 ここではないどこかへ」) 「先生」は僕のことを<若い友人>と呼んだ。師弟関係を忌避しながらも「先生」であり続けた加藤典洋とは、いったい何者だったのだろう。(長瀬海「僕と「先生」」) 批評とは<もっとも自由な散文>である。だから僕もここであたうかぎり自由に書くことにする――。思想の現在を問う新連載。(福尾匠「言葉と物」) 国境をこえて移動するとはどういうことか。長年調査で接してきたエチオピアの人々の経験をふまえ綴る、フランスからの報告。(松村圭一郎「海をこえて」)
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そして、工藤庸子さんの「文学ノート・大江健三郎」が連載再開。石川義正さんによる『水死』論「生殖するアンティゴネー――大江健三郎『水死』における人工妊娠中絶と戦争」もあわせてぜひ。河南瑠莉さんの「見えない存在になること――なぜ、今、再び『オリエンタリズム』なのか」では、政治性のなかで≪表象による正義≫を問い直しています。沢村遼さんの「空間という葛藤――岡崎乾二郎≪Mount lda――イーデーの山(少年パリスはまだ羊飼いをしている)≫」は、ファーレ立川問題を通して「パブリック」の意味を考える論考。邵丹さんによる「我が唯一つの望みに」は、村上春樹さんの最新作『街とその不確かな壁』の長篇書評です。
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共同体と家族の対立という上演への批判と再批判――『水死』というテクストの錯綜する論理を追う。(石川義正「生殖するアンティゴネー――大江健三郎『水死』における人工妊娠中絶と戦争」) これまで充分に表象されてこなかったマイノリティ・グループを可視化すること――、そこに潜む「観察者」の特権性っとエゴを見逃してはならない。政治性のなかで≪表象による正義≫を問い直す。(河南瑠莉「見えない存在になること――なぜ、今、再び「オリエンタリズム」なのか」) 「小説の言葉」(大江健三郎)と「言葉の肉体」(蓮實重彥)の同時代性とは何か。(工藤庸子「文学ノート・大江健三郎 第五回 Ⅱ 沸騰的なような一九七〇年代――大江健三郎/蓮實重彥」) 巨大な複数の力がそこに干渉するかのような、ねじり、反転、切断、置換、移動と、その動きに反発する物質的な力の拮抗――。彫刻から「パブリック」の意味を考える。(沢山遼「空間という葛藤――岡崎乾二郎≪Mount lda――イーデーの山(少年パリスはまだ羊飼いをしている)≫」) 村上春樹作品との出会いがきっかけとなり、日本語を学んで比較文化研究に進んだ著者による新作長篇評。デビュー作から一貫して見られる「完璧性」への志向と「言語の不完全さ」から読み解く。(邵丹「我が唯一つの望みに 村上春樹『街とその不確かな壁』長篇書評」) |
【批評】安藤礼二 【創作】柴崎友香 沼田真佑 | |
連作は安藤礼二さんの批評「空海」、創作が柴崎友香さん「帰れない探偵」と沼田真佑さんの「ながれも」。木山シリーズこれまでの掲載作をまとめた単行本にもご期待ください。
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空海に求められたのは、桓武の息子たちの間に蒔かれた「悲劇」の種子を取り除くことだった。(安藤礼二「空海」) ここはずっと夏の国。探偵の「わたし」は研究者に依頼されて四十年前のとある事件を調査する。(柴崎友香「帰れない探偵 雨季の始まりの熱い街で」) 月明りと花の香のせいか、愉快にもうろうとする意識の中、木山の前に現れたのは懐かしい川であった。(沼田真佑「ながれも」) |
【新連載】New Manual 【『口訳 古事記』刊行記念】町田康 森山恵 上野誠 | |
はやくも話題沸騰、町田康さん『口訳 古事記』観光を記念して、森山恵さんが聞き手となったインタビューと、上野誠さんによる書評「ファンキーな文体で綴る古事記」をお届けします。町田さんご自身による朗読もアップされていますので、ぜひご覧ください。 日本語の源泉にあふれるエネルギーを、どうやって現在に接続するか。重層的な「語り」を通して、「古事記」の魅力に迫るインタビュー。(町田康 聞き手・森山恵「ふることふみ――言葉の根源に近づく」)
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新連載「New Manual」がスタートします。初回は(こちらも!)町田康さん「永遠の唄」。 固定観念を疑い、既存の価値観をアップデートする「文×論×服」のクロスオーバー。新連載「New Manual」。(町田康「永遠の唄」) |
【論点】会田薫子 【最終回】大山顕 【コラボ連載】中村隆之 | |
「論点」は会田薫子さんによる、「Frailtyから考える医の倫理」。 大山顕さん「撮るあなたを撮るわたしを」が最終回を迎えています。「自分で自分を撮る」、自撮り文化の画期性はどこにあったのか。現在の「写真」を語ることは、何について考えることなのか? スマホとSNS時代のあらたな「撮る/撮られる」論が完結。弊社から単行本化予定です。 現代新書編集部とのコラボ連載「SEEDS」は中村隆之さんの「会社で働く人の自由と責任 構造的不正義と向き合う」です。
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