群像2022年12月号(11月7日発売)
特別定価1550円
【中篇一挙】青野 暦 【創作】金原ひとみ 川上弘美 町田 康 | |
千秋は聴く。慈郎が話す、死んだ朝寿のことを、かれがよく行っていたおでん屋のことを、おでん屋で聴いた誰かの語りを、誰のものかわからなくなった、誰のものでもない声に、耳をすませる。このからだが、書かれた文字に、書くための紙になるまで、聴いてみたいと思っている。(青野 暦「雲をなぞる」)
「激辛フェスで大役をこなす自分を見てもらって、その勢いでプロポーズしようと思ってるんです」。フェスティヴィタ池尻大橋店の長い一日が始まる。(金原ひとみ「フェスティヴィタDEATHシ」)
銀坂の孫の、不登校がつづいているらしい。「だめな時は、逃げればいいのよ」母の声を思い出した。(川上弘美「袋いっぱいに黒い種が」)
民に慕われ聖帝と呼ばれても、嫉妬深い大后の怒りに為す術もない。「町田古事記」最終話。(町田 康「仁徳天皇」) |
【小さな恋】みつはしちかこ 高瀬隼子 井戸川射子 水上 文 毬矢まりえ×森山恵 菅原 敏 | |
恋/愛にまつわる言葉の小さな種を、心にゆだねる。
『小さな恋のものがたり』を描きつづけて60年。初恋のときめきを胸に秘めた、81歳の漫画家が編んだ夢いっぱいの宝箱。(みつはしちかこ「小さな恋の60年」)
息子が保育園でバレンタインのチョコレートをもらった。「うれしいか?」「うれしいよ!」無邪気な声に、おれは別の記憶に思いをはせる。(高瀬隼子「お返し」)
〈あなたは熱い風雨だ、見える限りの、宇宙に抜けていく空だ、〉。中也賞詩人の書き下ろし詩篇。(井戸川射子「かわいそうに、濡れて」)
いまだ包摂されないグラデーションをとらえるために。松浦理英子作品を透かして拡張する親密性のかたち。(水上 文「あなたが生きられる物語 ――恋/愛を問い直す」)
『源氏物語 A・ウェイリー版』の〈戻し訳〉は、いかにして成しとげられたのか――「ワードローブのレディ」「エンペラー・キリツボ」など、光る訳語を見出した翻訳秘話。(毬矢まりえ×森山 恵「レディ・ムラサキのティーパーティー――姉妹訳 ウェイリー源氏物語」)
取り戻せない過去、物が導く記憶、胸に空いたドーナツの穴。「惜しかったね」と懐かしく笑いあう日々に、詩と散文と、浸る幸福。(菅原 敏「静かに眠っている本を」)
「偏愛」するものがあるってなんて素敵なんだろう。青葉市子、小川洋子、木下龍也、高山羽根子、町屋良平、向井康介各氏による愛情あふれる6つのエッセイ「偏愛ラブレター」。 |
【ソルニット、ふたたび】川端康雄×ハーン小路恭子 東辻賢治郎 渡辺由佳里 | |
翻訳者たちが語り、なぞり、ひらいて描く、レベッカ・ソルニットの肖像。
ディストピア的イメージを覆し、自然を愛する新たなオーウェルの本質を見出していく。ソルニットの新刊『オーウェルの薔薇』をめぐる、共訳者ならではの刺激的対話。(川端康雄×ハーン小路恭子「自然と政治、蛇行する思考――オーウェルとソルニット」)
なぜソルニットは砂漠でカントリーミュージックを聞いているのか。砂漠と音楽をめぐるいくつかの事柄。(東辻賢治郎「砂漠のノーテーション」)
思想家、社会活動家、フェミニスト――。母国アメリカではどのように受容されているのか。あなたにとってのソルニットは?(渡辺由佳里「レベッカ・ソルニットの捉え方で露呈するのは読者自身かもしれない」) |
【追悼・中井久夫】最相葉月 【エッセイ】斉藤 倫 【対談】鶴見太郎×尾崎真理子 | |
精神科医として、文学者として多くの業績を残した中井久夫が亡くなってから3ヵ月。彼の人間としての態度が今も私たちに伝え続けるものとは――。最相葉月さんにエッセイ「追悼・中井久夫 ヒュブリスの罪と十字架」をご寄稿いただきました。
本誌連載『ポエトリー・ドッグス』単行本化を記念して、斉藤倫さんにエッセイ「近代詩100年の「わからなさ」」をご寄稿いただきました。――詩のわからなさとはなんなのか、そして、どこからくるのか。一九二二年という文学上の特異点から、モダニズムを解きほぐす。
大江文学における柳田国男、島崎藤村、平田篤胤の痕跡を探究した尾崎真理子さん『大江健三郎の「義」』をめぐって、鶴見太郎さんと行った対談「大江健三郎と柳田国男の“夢のゆくえ”」を掲載しています。 |
【連作】伊藤春奈 【article】谷口歩実 【最終回】保阪正康 【コラボ連載】塩原良和 | |
伊藤春奈さんの連作「ふたり暮らしの〈女性〉史」第三回は、木部シゲノについて。無責任に語り継がれてきた「常識」的な性/生ではない、彼女たちが選びとった足取りを見つめ直す試み。
articleは「#みんなの生理」共同代表の谷口歩実さんによる「生理から既存の社会を問う――「生理アクティビズム」の課題と可能性」。
保阪正康さん「Nの廻廊」が最終回を迎えました。
現代新書編集部とのコラボ連載「SEEDS」、今月は塩原良和さん「多文化共生から、違う世界に生きる人々との共生へ」です。 |
〈中篇一挙掲載〉
〈創作〉
〈特集「小さな恋」〉
〈小特集「ソルニット、ふたたび」〉
〈エッセイ〉
〈対談〉
〈連作〉
〈article〉
〈最終回〉
〈コラボ連載〉
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〈連載〉
〈随筆〉
〈書評〉
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