群像2022年2月号(1月7日発売)
特別定価1450円
【新年短篇特集】池澤夏樹 川上弘美 佐伯一麦 長島有里枝 沼田真佑 藤野可織 町田 康 | |
2月号ではありますが、暦のうえでは新年売りの号になります。ということで今号は、一年の始まりにふさわしい、豪華で読み応えのある短篇特集をお届けします。 人々は荒れ果てた故郷を離れ、生きるための旅に出る。国境の検問所の権力者は、美しい女を前にほくそ笑む。(池澤夏樹「砂漠の検問所」) アンから、夏野とミナト父娘と三人で会ったことを聞いたとたん、朝見はお腹の中がたよりなくなってきた。この感覚は嫉妬だと気づく。(川上弘美「流れるプールに流される」) 到来物の枇杷を食べた早瀬が吐き出した種を、柚子の提案で植木鉢に埋めることにした。(佐伯一麦「枇杷は九年で」) 「やっぱりわたし、踊ってくる」。その翌日も、未土里はバレエ教室に向かった。(長島有里枝「翌日」) ああ、どうして面など被るのだろう。小説家の木山は、スナックで見た面が頭から離れない。(沼田真佑「ひなた」) 男の子の美しさに気づいたのは十六歳の時だった。きららは彼そのものになりたかった。(藤野可織「美しい死」) 夫をえらぶか、兄をえらぶか。しゃべらない御子に何が効くのか。町田古事記「沙本毘古と沙本毘売」「本牟智和気御子」。(町田 康「垂仁天皇の治世」) |
【創作】舞城王太郎「短篇七芒星」 柴崎友香「帰れない探偵 風が歌うとき」 | |
舞城王太郎さんの「短篇七芒星」は「奏雨/狙撃/落下/雷撃/代替/春嵐/縁起」という七つの短篇を一挙掲載。『短篇五芒星』(講談社文庫)が「群像」に掲載されてから10年。舞城ワールドをお楽しみ下さい。 柴崎友香さんの大好評連作シリーズ「帰れない探偵」の最新作は、「風が歌うとき」。この町ではめずらしく、十二月に晴天が三日続いた日。ドナ(仮名)がホテルに現れる――。 |
【ノンフィクション】佐野広記「まぶしすぎる太陽」 【新連載】伊藤潤一郎「投壜通信」 | |
NHKで日々さまざまな取材報道を続けている佐野広記さんによるノンフィクション「まぶしすぎる太陽」。NHKに眠る膨大な映像資料と直接取材を通して、知られざる大阪万博の姿を掘り起こします。 伊藤潤一郎さんの新連載「投壜通信」がスタートします。〈いつかどこかで読んだり聞いたりした言葉が、ある日どこかで新たな意味をともなって私のもとへと届く〉。忘却され、時間をかけて熟成された言葉を、受け取って下さい。 |
【論点】大山 顕 木原善彦 鈴木みのり | |
今月の「論点」は3本。大山顕さん、木原善彦さん、鈴木みのりさんにそれぞれ「写真論」「アリ・スミス」「トランスジェンダーをめぐる表象」について論じていただきました。 |
【article】三辺律子 能條桃子 | |
「article」も2本あります。『THIS ONE SUMMER』を翻訳された三辺律子さんに、グラフィックノベルの世界の魅力に迫っていただきました。若者の政治参加をうながす団体「NO YOUTH NO JAPAN」を設立した能條桃子さんには、「政治を語ること」について書いていただきました。 |
〈新年短篇特集〉砂漠の検問所 池澤夏樹流れるプールに流される 川上弘美枇杷は九年で 佐伯一麦翌日 長島有里枝日なた 沼田真佑美しい死 藤野可織乗仁天皇の治世 町田 康〈創作一挙〉短篇七芒星 舞城王太郎奏雨/狙撃/落下/雷撃/代替/春嵐/縁起〈ノンフィクション〉まぶしすぎる太陽 佐野広記〈新連載〉投壜通信〔1〕「あなた」を待ちながら 伊藤潤一郎〈連作〉帰れない探偵 風が歌うとき 柴崎友香〈論点〉コロナと顔をめぐる写真論 大山 顕絡み合う木の葉と言の葉――アリ・スミスの季節四部作 木原善彦陶酔する物語を探して 鈴木みのり〈article〉グラフィックノベルの世界 三辺律子NO YOUTH NO JAPAN――政治を語る共通言語を持つための教科書づくり 能條桃子 | 〈連載〉の、すべて〔2〕 古川日出男 太陽諸島〔5〕 多和田葉子 新「古事記」an impossible story〔6〕 村田喜代子 見えない道標〔8〕 若松英輔 はぐれんぼう〔19〕 青山七恵 ゴッホの犬と耳とひまわり〔25〕 長野まゆみ 鉄の胡蝶は記憶に夢は歳月に彫るか〔42〕 保坂和志 磯崎新論〔2〕 田中 純 講談放浪記〔2〕 神田伯山 地図とその分身たち〔5〕 東辻賢治郎 ケアする惑星〔7〕 小川公代 世界と私のA to Z〔10〕 竹田ダニエル 言葉の展望台〔10〕 三木那由他 こんな日もある 競馬徒然草〔12〕 古井由吉 旋回する人類学〔12〕 松村圭一郎 ポエトリー・ドッグス〔13〕 斉藤 倫 マルクスる思考〔16〕 斎藤幸平 現代短歌ノート二冊目〔17〕 穂村 弘 日日是目分量〔18〕 くどうれいん Nの廻廊〔12〕 保阪正康 薄れゆく境界線 現代アメリカ小説探訪〔20〕 諏訪部浩一 「近過去」としての平成〔23〕 武田砂鉄 「ヤッター」の雰囲気〔23〕 星野概念 星占い的思考〔23〕 石井ゆかり 辺境図書館〔23〕 皆川博子 国家と批評〔20〕 大澤 聡 〈世界史〉の哲学〔139〕 大澤真幸 文芸文庫の風景〔14〕 佐伯慎亮 〈随筆〉まなざしの持つ時間 加藤拓也 サーモンフライ 小池水音 ウィズコロナ 永井みみ 〈書評〉 |