群像2021年6月号

第64回群像新人文学賞

受賞作発表!

当選作は石沢麻依「貝に続く場所にて」島口大樹「鳥がぼくらは祈り、」、優秀作は松永K三蔵「カメオ」に決まりました。受賞の言葉、選評(柴崎友香・島田雅彦・古川日出男・町田 康・松浦理英子)と合わせてお読み下さい。優秀作の作品掲載は次号になります。


ルシア・ベルリン3作品

岸本佐知子が訳し下ろし

没後「再発見」され、一昨年『掃除婦のための手引き書』が話題となったルシア・ベルリン。単行本未収録作品から3篇「虎に嚙まれて」「カルメン」「B・Fとわたし」岸本佐知子が訳し下ろし。単行本第2弾も予定していますので、お楽しみに!


【短篇】川上弘美 【中篇】朝比奈あすか 井戸川射子

部屋を訪ねてから半年が過ぎた。カズと仕事先でばったり会って、焼き鳥とポテトサラダのある喫茶店に行った。(川上弘美「吉行淳之介だけれど、もともとは牧野信一の」)

わたしが勤めはじめた塾には、いたるところに「見守りEYES」という監視の目がついていた。(朝比奈あすか「誰もいない教室」)

アプリで出会って一ヵ月、初めて彼の家へ行けた。幼なじみの脚本を、また受け取った。もうすぐ私は二十五歳になる。(井戸川射子「素晴らしく幸福で豊かな」)


小説における愛とは?

江國香織×東山彰良

「愛」をどう描くのか。ホンモノとは何か――。『どの口が愛を語るんだ』刊行を記念した、「アウトサイダー」二人の対話、江國香織×東山彰良「愛、ホンモノ、文学の周辺」をお楽しみ下さい。


【批評】矢野利裕 【最終回】工藤庸子 小田原のどか 町屋良平

物語は誰のためにあるのか――批評の未来を拓く文学論。(矢野利裕「おかしさを見すえて、夢中に生きて――西加奈子論」)

「リリーディング」によって後期大江の全体像を照らし出した批評がついに完結。(工藤庸子「大江健三郎と「晩年の仕事(レイト・ワーク)」」第6回)

立体造形、総合造形、立体アート、フィギュア……「彫刻」という言葉は、失われつつある。情況への応答。(小田原のどか「近代を彫刻/超克する」第3回)

生きている私が「現実」として見ているものはなんだったのだろう。連作最終回。(町屋良平「ほんの私」)


もくじ

〈第64回群像新人文学賞発表〉

〈当選作〉

貝に続く場所にて  石沢麻依 

鳥がぼくらは祈り、  島口大樹

〈優秀作〉(作品掲載は次号)

カメオ  松永K三蔵

受賞の言葉

選評(柴崎友香/島田雅彦/古川日出男/町田 康/松浦理英子)

〈創作・翻訳〉

虎に嚙まれて/カルメン/B・Fとわたし  ルシア・ベルリン 岸本佐知子 訳・解説

〈創作〉

吉行淳之介だけれど、もともとは牧野信一の  川上弘美

誰もいない教室  朝比奈あすか

素晴らしく幸福で豊かな  井戸川射子

〈『どの口が愛を語るんだ』刊行記念対談〉

愛、ホンモノ、文学の周辺  江國香織×東山彰良

〈批評〉

おかしさを見すえて、夢中に生きて――西加奈子論  矢野利裕

〈最終回〉

〈批評〉

大江健三郎と「晩年の仕事(レイト・ワーク)」〔6〕  工藤庸子

近代を彫刻/超克する〔3〕  小田原のどか

〈創作〉 

ほんの私  町屋良平

〈レポ漫画〉 

100分de名言を求めて〔2〕  増村十七

〈article〉  

さようなら、ファーリンゲティ  ジョン・フリーマン 小澤身和子 訳

〈コラボ連載〉

DIG 現代新書クラシックス〔6〕  まっすぐな時代からの後ずさり  石川輝吉

〈連載〉

その日まで〔20〕  瀬戸内寂聴

見えない道標〔4〕  若松英輔

戒厳〔7〕  四方田犬彦

はぐれんぼう〔11〕  青山七恵

ゴッホの犬と耳とひまわり〔17〕  長野まゆみ

鉄の胡蝶は夢の歳月の記憶は彫るか〔34〕  保坂和志

世界と私のA to Z〔2〕  竹田ダニエル

言葉の展望台〔2〕  三木那由他

スマートな悪 技術と暴力について〔3〕  戸谷洋志

こんな日もある 競馬徒然草〔4〕  古井由吉

旋回する人類学〔4〕  松村圭一郎

ポエトリー・ドッグス〔5〕  斉藤 倫  

マルクスる思考〔9〕  斎藤幸平

硝子万華鏡〔9〕  日和聡子×ヒグチユウコ

現代短歌ノート二冊目〔9〕  穂村 弘

日日是目分量〔10〕  くどうれいん  

薄れゆく境界線 現代アメリカ小説探訪〔13〕  諏訪部浩一

歴史の屑拾い〔14〕  藤原辰史

「近過去」としての平成〔15〕  武田砂鉄

「ヤッター」の雰囲気〔15〕  星野概念

星占い的思考〔15〕  石井ゆかり

辺境図書館〔16〕  皆川博子

国家と批評〔15〕  大澤 聡

文芸文庫の風景〔6〕  六角堂DADA

極私的雑誌デザイン考〔17〕  川名 潤

文芸文庫通信〔4〕 

〈随筆〉

貧者を「信用」する技術  小島庸平

おもくて、やさしい  瀬戸山美咲

地図から消える女  東辻賢治郎

茂りゆく場所  菅原匠子

〈書評〉

『大坂』岸 政彦/柴崎友香  青木淳悟

『ジャックポット』筒井康隆  今野 敏

『つまらない住宅地のすべての家』津村記久子  藤野千夜

『わたしが行ったさびしい町』松浦寿輝  管 啓次郎

『LAフード・ダイアリー』三浦哲哉  廣瀬 純

『山の人魚と虚ろの王』山尾悠子  諏訪哲史

『血も涙もある』山田詠美  綿矢りさ