群像2021年3月号

創作 若松英輔 川上弘美 いしいしんじ

「読む」ことで巡り会いながら、通り過ぎたものと再び向き合うために――自らの生涯をたどり直す。若松英輔の新連載「見えない道標」。アメリカに行ったアンの帰国が遅れて、二人で行くはずだった舞台にカズを誘った。川上弘美の短篇「夜中目が覚めた時に必ず考える」。突然、「息のかたち」が見えるようになった少女。潜んでいるのは希望か、それともーーいしいしんじの短篇「桃息吐息」


ルポ 古川日出男

生まれた場所は自分にとっては核(コア)だ。私たちはみな郷里(ふるさと)という名前の原発を抱え込んでいる。個人と国家を思考する、古川日出男による、二ヵ月連続の渾身ルポ「国家・ゼロエフ・浄土」。


小特集 第三の新人 江國香織 島田潤一郎 山本貴光 アンケート

文学はいつの時代も「いま」を描いてきた。かつて「第三の新人」と名付けられた作家たちの「いま」をリリーディングする。小特集「第三の新人」では、江國香織の創作「あかるい場所」島田潤一郎のエッセイ「山の上の家のまわり」、山本貴光の批評「日常の再発見に向けて――「第三の新人」を読むために」を掲載。アンケート「いま読みたい第三の新人作品」では、石倉真帆、石田千、大前粟生、小川哲、河﨑秋子、木村紅美、郡司ペギオ幸夫、高橋弘希、高山羽根子、乗代雄介、三国美千子、水原涼が参加。


チェルフィッチュ群像公演 岡田利規 金氏徹平 篠原雅武

ヒトとモノが共演/競演/饗宴する演劇が、小説となって開演。人間的尺度を超えた出来事と、ヒトはどのように関係を結ぶのか。チェルフィッチュ/岡田利規による創作「消しゴム式」。岡田利規による解説「「消しゴム式」への道」、金氏徹平によるエッセイ「消しゴムを最後まで使い切ったことがない」、篠原雅武による「エコロジカル・クライシスにおける「共鳴の領域」の探求」を掲載。


新連載 松村圭一郎

転回を繰り返してきた文化人類学の変遷と現在地を思索する旅がスタート。松村圭一郎による新連載「旋回する人類学」。


もくじ

〈新連載〉

見えない道標  若松英輔

〈創作〉

夜中目が覚めた時に必ず考える  川上弘美

桃息吐息  いしいしんじ

〈震災後の世界10先行掲載〉

国家・ゼロエフ・浄土  古川日出男

〈小特集 第三の新人〉

〈創作〉

あかるい場所  江國香織

〈エッセイ〉 

山の上の家のまわり 島田潤一郎

〈批評〉 

日常の再発見に向けて――「第三の新人」を読むために 山本貴光

〈アンケート いま読みたい第三の新人作品〉  

石倉真帆/石田千/大前粟生/小川哲/河﨑秋子/木村紅美/郡司ペギオ幸夫/高橋弘希/高山羽根子/乗代雄介/三国美千子/水原涼

〈チェルフィッチュ群像公演〉

〈創作〉 

消しゴム式 チェルフィッチュ/岡田利規

〈解説〉 

「消しゴム式」への道 岡田利規

〈エッセイ〉

消しゴムを最後まで使い切ったことがない  金氏徹平

〈批評〉 

エコロジカル・クライシスにおける「共鳴の領域」の探究  篠原雅武

〈批評・ノンフィクション〉

〈新連載〉 

旋回する人類学  松村圭一郎

〈最終回〉

非人間〔6〕 大澤信亮 

ケアの倫理とエンパワメント〔3〕〈他者〉への暴力と弱さの倫理――ロマン主義文学から平野啓一郎まで   小川公代

〈読み切り〉 

フェミニズム小説としての津島佑子――『笑いオオカミ』『ナラ・レポート』を読む 木村朗子

〈連作〉 

大江健三郎と「晩年の仕事」〔5〕 工藤庸子 

2011―2021 視えない線の上で〔7〕 石戸諭

〈対談〉

批評のマテリアリズム  安藤礼二×佐々木敦

〈古井由吉一周忌〉

競馬場の人  高橋源一郎

こんな日もある 競馬徒然草  古井由吉

過渡期の書――『東京物語考』考  蜂飼耳

ひじりの庭  築地正明

〈映画公開記念対談〉

小説『身分帳』から映画『すばらしき世界』へ 西川美和×六角精児

〈コラボ連載〉

DIG 現代新書クラシックス〔3〕 アフター・コロナの優生思想 荒井裕樹

〈追悼半藤一利〉

戦後の精神 保阪正康

現代日本の墨家たらんとした人 井上亮

〈連載〉

戒厳〔4〕  四方田犬彦

はぐれんぼう〔8〕  青山七恵

ゴッホの犬と耳とひまわり〔14〕  長野まゆみ

鉄の胡蝶は歳月に記憶を夢に彫るか〔31〕  保坂和志

ポエトリー・ドッグス〔34〕  斉藤倫  

マルクスる思考〔6〕  斎藤幸平

硝子万華鏡〔6〕  日和聡子×ヒグチユウコ

現代短歌ノート二冊目〔6〕  穂村弘

日常の横顔〔7〕  松田青子

日日是目分量〔8〕  くどうれいん

薄れゆく境界線 現代アメリカ小説探訪〔10〕  諏訪部浩一

ハロー、ユーラシア〔10〕  福嶋亮大

歴史の屑拾い〔11〕  藤原辰史

「近過去」としての平成〔12〕  武田砂鉄

「ヤッター」の雰囲気〔12〕  星野概念

星占い的思考〔12〕  石井ゆかり

辺境図書館〔13〕  皆川博子

国家と批評〔12〕  大澤聡

新連載 文芸文庫の風景〔3〕  馬込将充

極私的雑誌デザイン考〔14〕  川名潤

〈随筆〉

一生働く未来  明石順平

よその家の食卓 梶谷いこ

竈門炭治郎と沢田正二郎  笹山敬輔  

丸の内の馬糞  原田ひ香

胃袋の飛地  湯澤規子

〈書評〉

『みがわり』青山七恵  江南亜美子

『死ぬまでに行きたい海』岸本佐知子  宮永隆一朗

『女は不死である』立木康介  工藤顕太

『猫がこなくなった』保坂和志  大崎清夏