群像2020年6月号

創作 小林エリカ「脱皮」 リービ英雄「文字の高原」

不妊治療に励む理科教師。死を待つ老人。何かを手放したい少女たち。災厄のなかで、生への希望が試される。時代の危機にこたえる、新たな小説が誕生した。小林エリカの創作「脱皮」

チベットの高原にある寺院にたどり着いた「かれ」は、奇妙な体験をする。言語と言語、大陸と大陸、国と国、そして人と人の狭間から生まれる、文学の現在地。リービ英雄の創作「文字の高原」。


新連載 福嶋亮大「ハロー、ユーラシア」 諏訪部浩一「薄れゆく境界線――現代アメリカ小説探訪」

世界の秩序が変わりつつあるいま、「ユーラシア」の存在がふたたび浮上している。来たるべき世界を幻視する、批評の冒険。福嶋亮大の「ハロー、ユーラシア」。グローバル化で「アメリカ」自体の輪郭がぼやけていくなか、近代の産物たる「小説」はどう時代に応接してきたのか――「アメリカ」の新しい「見取り図」。諏訪部浩一の「薄れゆく境界線――現代アメリカ小説探訪」。


特集 翻訳小説

特集・翻訳小説! アンケート「2019-2020 70の世界地図「最新翻訳小説地図」」では、阿部公彦/磯上竜也/伊東順子/今福龍太/上野千鶴子/大空ゆうひ/大竹昭子/大塚真祐子/大森望/岡真理/小川公代/小川哲/小川洋子/小国貴司/長田杏奈/長田育恵/小山田浩子/温又柔/鎌田裕樹/岸本佐知子/北田博充/木原善彦/木村朗子/久野量一/くぼたのぞみ/倉本さおり/栗原康/小島秀夫/小林エリカ/小山太一/斎藤真理子/酒寄進一/佐藤究/柴崎友香/下平尾直/瀧井朝世/武田将明/堂場瞬一/都甲幸治/豊﨑由美/鳥澤光/中島京子/中野善夫/名久井直子/西加奈子/根本宗子/野崎歓/野谷文昭/乗代雄介/橋本陽介/東山彰良/日野原慶/平松洋子/ひらりさ/深緑野分/藤井太洋/藤野可織/古川耕/古屋美登里/前田隆紀/松家仁之/松岡千恵/松田青子/松永美穂/三浦直之/水野衛子/宮下遼/山崎まどか/陸秋槎/若菜晃子が寄稿!

小論では、7人の翻訳者たちへの取材を通して探る、現代世界文学の最前線。辛島デイヴィッド「文芸ピープル+ ――英語圏で読まれる現代日本文学」。ヴァージニア・ウルフの末裔と呼びうる現代日本の作家は枚挙に暇がない。ウルフの影響は作品にどう顕れ、それは何を意味しているのか。鴻巣友季子「ウルフをめぐる静かな「ささやき」」。『カタストロフ前夜』が話題、フランス在住の著者による、翻訳=世界論。関口涼子「あらゆる行為が翻訳になる時」。固定観念を打ち捨てよう。世界文学を読み、自分はどこにいるのか探さねばならない。中村和恵「自分ごととしての動く世界文学」。翻訳とはどんなプロセスなのか、小説がある言語で書かれるとはどういう意味なのか。新たな問題系に光を当てる序論。沼野充義「この人は何語で話しているのですか?――小説内翻訳論序説」を掲載!


小特集 多和田葉子

ある境界(ボーダー)を超えて小説を発表してきた多和田葉子。分断と連帯が同時進行するなか、母語の外に出る人々が見る景色とは。新刊インタビュー、小論、全作品解説で解体する。多和田葉子インタビュー「離れていても、孤独ではない人間たちの闘争」(聞き手・構成:小澤英実)。岩川ありさの評論 多和田葉子の「星座小説」――『星に仄めかされて』をめぐってそして谷口幸代による保存版多和田葉子全作品解題。


論点 「コロナ禍」「視覚と音声」「境界線」

斎藤幸平 長谷正人 望月優大

[ポスト資本主義への「跳躍」に向けた扉こそが、今開かれている。今月の「群像」の論点――「コロナ禍」「視覚と音声」「境界線」。斎藤幸平の【緊急寄稿】「コロナ・ショックドクトリンに抗するために」。長谷正人「津波映像と『アナ雪』――視覚文化における「音声化」の諸問題」。望月優大「「複雑さ」と「私たち」」


もくじ

〈創作〉

脱皮  小林エリカ

文字の高原  リービ英雄

〈新連載〉

ハロー、ユーラシア  福嶋亮大

薄れゆく境界線――現代アメリカ小説探訪  諏訪部浩一

〈特集翻訳小説〉

最新翻訳小説地図

阿部公彦/磯上竜也/伊東順子/今福龍太/上野千鶴子/大空ゆうひ/大竹昭子/大塚真祐子/大森望/岡真理/小川公代/小川哲/小川洋子/小国貴司/長田杏奈/長田育恵/小山田浩子/温又柔/鎌田裕樹/岸本佐知子/北田博充/木原善彦/木村朗子/久野量一/くぼたのぞみ/倉本さおり/栗原康/小島秀夫/小林エリカ/小山太一/斎藤真理子/酒寄進一/佐藤究/柴崎友香/下平尾直/瀧井朝世/武田将明/堂場瞬一/都甲幸治/豊﨑由美/鳥澤光/中島京子/中野善夫/名久井直子/西加奈子/根本宗子/野崎歓/野谷文昭/乗代雄介/橋本陽介/東山彰良/日野原慶/平松洋子/ひらりさ/深緑野分/藤井太洋/藤野可織/古川耕/古屋美登里/前田隆紀/松家仁之/松岡千恵/松田青子/松永美穂/三浦直之/水野衛子/宮下遼/山崎まどか/陸秋槎/若菜晃子

文芸ピープル+ ――英語圏で読まれる現代日本文学  辛島デイヴィッド

ウルフをめぐる静かな「ささやき」  鴻巣友季子

あらゆる行為が翻訳になる時  関口涼子

自分ごととしての動く世界文学  中村和恵

この人は何語で話しているのですか?――小説内翻訳論序説  沼野充義

〈小特集 多和田葉子〉

多和田葉子インタビュー「離れていても、孤独ではない人間たちの闘争」 聞き手・構成:小澤英実

多和田葉子の「星座小説」――『星に仄めかされて』をめぐって  岩川ありさ

多和田葉子全作品解題  谷口幸代

〈批評〉

歴史と実験  長﨑健吾

〈短期集中完結〉

ギー兄さんとは誰か――大江健三郎と柳田国男  尾崎真理子

〈論点〉

【緊急寄稿】 コロナ・ショックドクトリンに抗するために  斎藤幸平

津波映像と『アナ雪』――視覚文化における「音声化」の諸問題  長谷正人

「複雑さ」と「私たち」  望月優大

〈短期集中ルポ〉

ガザ・西岸地区・アンマン④「国境なき医師団」を見に行く  いとうせいこう

〈連続対談〉

近代日本150年を読み解く 昭和前期篇  富岡幸一郎×佐藤優

〈連載完結〉

チームオベリベリ  乃南アサ

〈連載〉

ゴッホの犬と耳とひまわり〔6〕  長野まゆみ

鉄の胡蝶は記憶を夢に歳月に彫るか〔22〕  保坂和志

二月のつぎに七月が〔27〕  堀江敏幸

ブロークン・ブリテンに聞け Listen to Broken Britain〔28〕  ブレイディみかこ

「近過去」としての平成〔3〕  武田砂鉄

「ヤッター」の雰囲気〔3〕  星野概念

星占い的思考〔3〕  石井ゆかり

所有について〔4〕  鷲田清一

辺境図書館〔4〕  皆川博子

国家と批評〔4〕  大澤聡

LA・フード・ダイアリー〔9〕  三浦哲哉

現代短歌ノート〔121〕  穂村 弘

私の文芸文庫〔6〕  三浦雅士

極私的雑誌デザイン考〔5〕  川名潤

〈随筆〉

どうしようもできないのか、京都で。  杉原邦生

記憶  遠野遥

ごろごろ、神戸X  平民金子

場を閉ざされないために 田尻久子

〈書評〉

(『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』李龍徳)  陣野俊史

(『踏み跡にたたずんで』小野正嗣)  水原涼

(『アイロニーはなぜ伝わるのか?』木原善彦)  小川公代

(『地に這うものの記録』田中慎弥)  清水良典

(『近代のはずみ、ひずみ 深田康算と中井正一』長濱一眞)  山城むつみ