群像2019年6月号

第62回 群像新人文学賞発表

当選作 石倉真帆「そこどけあほが通るさかい」

少女と兄に浴びせかけられる呪詛と軽侮の言葉たち。永劫に続くかと思われる艱難は濃密な家の関係を否応なく炙り出す。その果てに解放はあるのか。少女はいかに生きるのか。圧倒的筆致で魂の成長を描く新鋭のデビュー作。石倉真帆「そこどけあほが通るさかい」


創作270枚 

畠山丑雄「先生と私」

大学に入学した奈央は高校の同級生・伊藤から先生を紹介される。下鴨西林町にある先生の下宿に出入りするうち、先生のまなざしに悲しみが流れていることを知る。畠山丑雄の創作270枚「先生と私」


評論60枚 

宮澤隆義「資本主義という「戦争」ーー中野重治の戦時下批評から」

森鴎外、斎藤茂吉、志賀直哉……中野重治はなぜ戦時中に彼らの批評を書いたのか。全面化する資本主義への抵抗をさぐる力作評論。宮澤隆義の評論60枚「資本主義という「戦争」ーー中野重治の戦時下批評から」


特別対談 

松浦寿輝×吉増剛造「魂の身ぶり、言語の動き」

「書物が出現した」と詩人・吉増剛造が驚いた新作。アラカシの巨木から滲みだしぽとりと落ちたわたしたち。二人の文学者が『人外』を巡って対話する。松浦寿輝と吉増剛造による特別対談「魂の身ぶり、言語の動き」



もくじ

〈第62回群像新人文学賞発表〉

〈当選作〉

そこどけあほが通るさかい 石倉真帆

受賞のことば

選評 柴崎友香 高橋源一郎 多和田葉子 野崎歓 松浦理英子

〈創作270枚〉

先生と私  畠山丑雄

〈評論60枚〉

資本主義という「戦争」ーー中野重治の戦時下批評から  宮澤隆義

〈特別対談〉

魂の身ぶり、言語の動き 松浦寿輝×吉増剛造

〈連載〉

その日まで〔9〕  瀬戸内寂聴

星に仄めかされて〔6〕  多和田葉子

チーム・オベリベリ〔7〕  乃南アサ

鉄の胡蝶は夢を歳月に記憶は彫るか〔11〕  保坂和志

帝国の黄昏〔11〕  花村萬月

御社のチャラ男〔14〕   絲山秋子

おおきな森〔18〕   古川日出男

ブロークン・ブリテンに聞け Listen to Broken Britain〔16〕ブレイディみかこ

全体論と有限 ーひとつの「小説」論ー〔7〕 佐々木 敦

出雲神話論〔21〕  三浦佑之

人間とは何か──フランス文学による感情教育──〔23〕   中条省平

〈世界史〉の哲学〔115〕  大澤真幸

現代短歌ノート〔109〕  穂村 弘

〈随筆〉   

高等のゆくえ  塚谷裕一

父のビスコ  平松洋子

東ドイツの村と中央線界隈の黄昏  池田信雄

山頂からの葉書  中尾太一

〈書評〉

歴史のうねりの中で(『人類最年長』島田雅彦)  望月衣塑子

空を飛ぶ魂と羽ばたく老女たち(『飛族』村田喜代子)  松永美穂

燃えあがる狐の葉(『藁の王』谷崎由依)  小澤英実

言葉の「汚れ」を通じて真実に触れる(『美しい顔』北条裕子)  田中和生

〈創作合評〉 

佐伯一麦×陣野俊史×石田 千

「むらさきのスカートの女」今村夏子(「小説トリッパー」2019年春号)

「神前酔狂宴」古谷田奈月(「文藝」2019年夏季号)