群像2018年1月号

新連載

古川日出男「おおきな森」

「京都は三つある」とのフレーズ。兼業探偵として失踪の謎を追う坂口安吾。満洲に勤務した伯父のことを書かねばならない私――。疾駆する言葉と圧倒的な想像力で世界を溶解させる交響曲(シンフォニー)。かつてない壮大なスケールで繰り広げられる文学の冒険が始まる。古川日出男の巨篇新連載「おおきな森」


歳時創作シリーズ 壱 季・憶 Ki-Oku

瀬戸内寂聴「麋角解」 絲山秋子「雉始雊」 伊坂幸太郎「鶏始乳」

時の揺らめき、大気の手ざわり、絶え間なき生の運動。作家の想像力で繫ぐひととせ――二十四節気七十二候――の季節の記憶。一年をとおした読み切り掌篇大特集。歳時創作シリーズ 「季・憶 Ki-Oku」。第1弾は瀬戸内寂聴「麋角解(さわしかのつのおつる)」、絲山秋子「雉始雊(きじはじめてなく)」、伊坂幸太郎「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」


短篇

西村賢太 陋劣夜曲

北町貫太の肉慾の希求は、何やら最高潮に達していた――。二十歳台となって最初に味わう年末。下腹部の悶々たるうねりを持て余す貫多は、青果市場での夜間勤務の日払いの仕事を探し当てるが……。西村賢太の短篇「陋劣夜曲」


特別対談

瀬戸内寂聴×佐藤愛子「愛情がないと書けない」

「七十年も書いてきましたからね。もうやめられない」。九十五歳で長篇小説『いのち』を刊行した瀬戸内寂聴氏と、エッセイ『九十歳。何がめでたい』が大好評の佐藤愛子氏。敬慕する作家や文学、男の話から死についてまで縦横に語り合う。瀬戸内寂聴×佐藤愛子の特別対談「愛情がないと書けない」


特別対談

吉増剛造×ヴァレリー・アフェナシエフ「不完全の美しさ」

本物の芸術家とは自身の裡にあるハーモニー自体ですべてが十分である――。詩人とピアニスト、二人の巨匠の邂逅。ニーチェ、カフカ、シューベルト……様々な固有名をめぐって交わされる哲学的対話に、芸術の深淵を覗き見る。吉増剛造×ヴァレリー・アファナシエフの特別対談「不完全の美しさ」


もくじ

〈新連載〉第1回300枚

おおきな森  古川日出男

〈歳時創作シリーズ 壱〉季・憶 Ki-Oku

麋角解(さわしかのつのおつる)   瀬戸内寂聴

雉始雊(きじはじめてなく)     絲山秋子

鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく) 伊坂幸太郎

〈短篇〉

陋劣夜曲 西村賢太

〈特別対談〉

瀬戸内寂聴×佐藤愛子

 「愛情がないと書けない」

吉増剛造×ヴァレリー・アフェナシエフ

 「不完全の美しさ」

〈野間文芸賞・野間文芸新人賞発表〉

第70回野間文芸賞受賞作

「土の記」(上・下) 髙村 薫

受賞のことば/選評(奥泉 光 佐伯一麦 多和田葉子 町田 康 三浦雅士)

第39回野間文芸新人賞受賞作

「星の子」  今村夏子

「日曜日の人々(サンデー・ピープル)」高橋弘希

受賞のことば/選評(小川洋子 島田雅彦 高橋源一郎 長嶋 有 保坂和志 星野智幸)

〈連作〉

ピエタとトランジ〈完全版〉〔8〕藤野可織

〈リレーエッセイ「私と大江健三郎」〉

失神するほど好きな人  朝吹真理子

〈連載小説〉

人外(にんがい)〔3〕  松浦寿輝

二月のつぎに七月が〔9〕  堀江敏幸

〈連載評論〉

出雲神話論〔4〕  三浦佑之

人間とは何か                   ──フランス文学による感情教育──〔6〕中条省平

たましいを旅するひと──河合隼雄〔11〕 若松英輔

〈世界史〉の哲学〔99〕  大澤真幸

現代短歌ノート〔92〕  穂村 弘

〈随筆〉

パンダと憲法  蓮實重彦

九月の白い薔薇──ヘイトカウンター  笙野頼子

玄冬小説の書き手を目指す  若竹千佐子

芸術祭が偉大であった時代  佐藤雄一

名付けたがり  佐藤文香

願わくば、来世も人間で  紗倉まな

突然の告白  松本花奈

〈書評〉

「小説」は何か                  (『鳥獣戯画』磯﨑憲一郎)  金井美恵子

浸食する物語(『踊る星座』青山七恵)  千早 茜

森は、果てしなく                 (『森へ行きましょう』川上弘美)  酒井順子

歴史の本質に迫った団地小説            (『千の扉』柴崎友香)  原 武史

「にもかかわらず」の挑戦             (『本物の読書家』乗代雄介)  大澤 聡

〈創作合評〉

佐々木 敦+木村紅美+佐藤康友

「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」ふくだももこ(すばる2017年12月号)

「神がかり」佐藤友哉(新潮2017年12月号)

「愛が挟み撃ち」前田司郎(文學界2017年12月号)