群像2017年11月号

新連載

松浦寿輝「人外(にんがい)」

アラカシの巨木から、地面にぽとりと落ちた「わたしたち」。過去を想起し未来を予見しながらこの世界を横切っていく。そうするほかはないと心にきめてしまう。わたしたちはひとでなしであり人外なのだった──。松浦寿輝の新連載「人外」


特別対談

東 浩紀×加藤典洋「私と公、文学と政治について」

私から公は生まれるのか、文学から政治は語れるのか。中間項のフィールドとしての社会=世間がなくなった今、我々は何を指標に生きるべきか。『現代日本の批評 1975-2001』刊行を前に行われた哲学的示唆に富んだ大型対談。東 浩紀×加藤典洋の特別対談「私と公、文学と政治について」


中篇120枚

松波太郎「故郷」

音が言葉になり、言葉が意味になる世界で、クィには言えない語があった――。言葉のない世界に生きてたらどんなによかったか。それでも、書くことでは自由になれるかもしれない。言葉と生と書くことの意味を問う、松波太郎の中篇120枚「故郷」


短篇90枚

石田 千「母とユニクロ」

これって、なじょだと思う──。故郷に帰った娘は父母と暮らしはじめる。仕立屋人生五十余年の老いた母は、女優がつけるブラジャーのチラシに興味を持ち、娘とともにバスを乗り継ぎ、ユニクロへ。亡くなった人たちとの忘れられない思い出が胸を打つ。石田千の短編90枚「母とユニクロ」


短篇80枚

李 琴峰「流光」

縛ることと縛られることによって、私たちは―心同体になってゆく。光が流れるように、すべては移り行くとしても、闇夜の花たちは、何かを求め彷徨する。生=性を描いたデビュー作「独舞」で第60回群像新人文学賞(優秀作)を受賞した新人の待望の受賞第一作、李 琴峰の中篇80枚「流光」


もくじ

〈新連載〉

人外(にんがい)         松浦寿輝

〈特別対談〉

私と公、文学と政治について                    東浩紀×加藤典洋

〈中篇120枚〉

故郷             松波太郎    

〈短篇90枚〉

母とユニクロ         石田 千                   

〈短篇80枚〉

流光             李 琴峰

〈長篇評論〉

上演の想像力             ──戯曲に見る三島由紀夫の生と劇〈後篇〉

               青木純一

〈リレーエッセイ「私と大江健三郎」〉

巨人という存在        中村文則

〈連載小説〉

二月のつぎに七月が〔7〕  堀江敏幸

山海記〔14〕  佐伯一麦

〈連載評論〉

出雲神話論〔2〕  三浦佑之

人間とは何か                   ──フランス文学による感情教育──〔4〕中条省平

たましいを旅するひと──河合隼雄〔9〕 若松英輔

〈世界史〉の哲学〔97〕  大澤真幸

〈連載〉

現代短歌ノート〔90〕  穂村 弘

〈随筆〉

ヒトラーの顔  池内 紀

エモジがエモくなさすぎて  ブレイディみかこ

わたしの楽園  沼田真佑

不得意な旅2017  鳥飼 茜

〈私のベスト3

いま聴きたい落語家  中村 計

文体に囲まれて生きている  菊池 良

映画にとって本質的な問題  入江哲朗

〈書評〉

各駅停車の電車と木造アパートの二階の部屋    (『高架線』滝口悠生)片岡義男

半径六三七八キロメートルの孤独         (『通りすがりのあなた』はあちゅう)岩川ありさ

近未来のホログラム(『R帝国』中村文則)藤沢 周

壮大なる空振りの記録              (『岩塩の女王』諏訪哲史)高原 到

〈創作合評〉

佐々木 敦+木村紅美+佐藤康智

「木になった亜沙」今村夏子           (文學界2017年10月号)

「市民相談家」早助よう子(文學界2017年10月号)

「きみはコラージュ」春見朔子          (すばる2017年10月号)