群像2017年7月号

中篇180枚

乗代雄介「未熟な同感者」

先生のゼミに入ったのはことの成り行きとしか言いようがない。私はそこで美少女・間村季那と知り合う──。フローベール、宮沢賢治、サリンジャーらを巡る文学講義に錯綜する季那との関係、そして先生にまつわる妙な噂──。ペダンティックな魅力あふれる群像新人文学賞受賞の新鋭が送る意欲作。中篇180枚・乗代雄介「未熟な同感者」


中篇110枚

栗田有起「毛婚」

禿げているはずの夫の髪がふさふさになっている──。日頃から自らの禿げを誇りにしていた夫の増毛疑惑。自然に生えてきたと夫は言い張るのだが……。妊娠中の志穂が向き合うことになった夫婦の危機の行方は? 栗田有起の中篇110枚「毛婚」


特別対談

町田 康×都甲幸治「善悪を超えた世界と、文学の存在する意味」

群像連載から生まれた町田康の傑作大長編『ホサナ』。「ホサナ」という言葉、犬と人の関係、そして、バーベキュー。三つの手がかりを軸に、町田文学の新たな地平を浮き彫りにする。町田康×都甲幸治の特別対談「善悪を超えた世界と、文学の存在する意味」


リレーエッセイ「私と大江健三郎」

高橋源一郎「オオエ」

現代文学の最前線を走り続けてきたノーベル賞作家の全集決定版「大江健三郎全小説」(全15巻)が2018年7月刊行スタート! この巨人の文学を、作家たちはどのように受け止めてきたのか? リレーエッセイで綴る「私と大江健三郎」。第1回は高橋源一郎「オオエ」


連載完結

瀬戸内寂聴「いのち」

ガンの手術から復帰した著者が、大庭みな子、河野多惠子ら親交のあった作家たちの記憶とともに、70年の作家人生を振り返る。瀬戸内寂聴「いのち」ついに完結!


もくじ

〈中篇180枚〉

未熟な同感者        乗代雄介

〈中篇110枚〉

毛婚            栗田有起

〈特別対談〉

善悪を超えた世界と、文学の存在する意味

   町田 康×都甲幸治  

〈リレーエッセイ 私と大江健三郎〉

オオエ          高橋源一郎

〈連作〉

ピエタとトランジ〈完全版〉〔6〕

              藤野可織

塀のある道         黒井千次

〈連載評論〉

大拙〔5〕          安藤礼二

〈連載〉

いのち〔最終回〕   瀬戸内寂聴

二月のつぎに七月が〔3〕  堀江敏幸

地球にちりばめられて〔8〕  多和田葉子

九十九歳になった私〔10〕  橋本 治

山海記〔11〕  佐伯一麦

鳥獣戯画〔17〕  磯﨑憲一郎

〈連載評論〉

新・私小説論〔最終回〕  佐々木 敦

たましいを旅するひと──河合隼雄〔6〕 若松英輔

言語の政治学〔12〕  三浦雅士

〈世界史〉の哲学〔93〕  大澤真幸

〈連載〉

現代短歌ノート〔86〕  穂村 弘

〈随筆〉

認知症を知る旅  奥野修司

谷崎的建築観VS芥川的建築観  青木 淳

歩く鴉  颯木あやこ

知への嫌悪を乗り越える知を  近藤正高

〈私のベスト3

私の階段ベスト3  中島さおり

森へ導かれた体験  三浦 豊

近年の国内ディストピアSF  呉座勇一

〈書評〉

理と念(『ホサナ』町田 康)上田岳弘

目覚めよと呼ぶ声が聞こえ

(『カタストロフ・マニア』島田雅彦)佐々木 敦

踊り切り拓かれる道なき道

(『最愛の子ども』松浦理英子)小林エリカ

「続篇」を書き継ぎ、「異聞」を書き継ぐこと

(『平家物語 犬王の巻』古川日出男)安藤礼二

〈創作合評〉

辻原 登+中条省平+谷崎由依

「天使の断面」鈴木善徳(文學界2017年6月号)

「日曜日の人々(サンデー・ピープル)」高橋弘希(群像2017年6月号)

「四時過ぎの船」古川真人(新潮2017年6月号)