群像2016年4月号

特集 「人生の意味?」

さまざまな問題に直面しながら、ひたすら進むしかないこの“生”とは果たして何なのか。鷲田清一×大澤真幸松岡正剛×安藤礼二沼野充義×辻原 登保苅瑞穂×宮下志朗山田洋次×滝口悠生による5つの対談と、若松英輔による評論から探ります。特集「人生の意味」


対談 鷲田清一×大澤真幸、松岡正剛×安藤礼二、沼野充義×辻原 登、保苅瑞穂×宮下志朗、山田洋次×滝口悠生

評論 若松英輔

「自分はここに居ていいのだろうか?」鷲田清一大澤真幸が、根源的な問いから人生の意味を探ります。対談「人生の意味」

海に囲まれた島国・日本で、われわれ日本人はどのような思想を生み、育んできたのか? 言語、宗教、性差……さまざまな側面から松岡正剛安藤礼二が解読します。対談「日本人の思想」

さまざまなロシア文学の要素を取り入れながら創作をしてきた辻原登と、『チェーホフ 七分の絶望と三分の希望』を刊行したばかりの沼野充義が語り合う「チェーホフ的人生の意味」。ドストエフスキーやトルストイと比べ、チェーホフの文学と人となりに見える”サンス”とは?

「モンテーニュの書斎」を連載中の保苅瑞穂と、『エセー』全訳をまさに終えようとしている宮下志朗。モンテーニュのプロフェッショナルである両氏が考える『エセー』の読みどころとは? 対談「モンテーニュという生き方」

「男はつらいよ」シリーズはじめ傑作を次々生み出してきた映画監督・山田洋次と、野間新人賞受賞作『愛と人生』で寅さん愛を発揮した新芥川賞作家・滝口悠生。二人の語り合いから、映画・小説・役者の「力」と「秘密」が見えてきた!? 対談「愛と人生と寅さんと」、必読です。

誰もが求める”幸福”の正体とは? アラン、プラトン、神谷美恵子、シモーヌ・ヴェーユ、フランクル……、さまざまなコトバから若松英輔が読み解きます。評論「幸福論」


新連載 瀬戸内寂聴「いのち」

新連載 佐伯一麦「海山記」

「胆のうにガンがありました。……どうします?」その問いかけにすぐさま「取って下さい」と返した。満九十二歳、手術を拒否してもおかしくない自分がそう言えたのは、ガンで亡くなった友人たちのおかげかもしれない。瀬戸内寂聴が描く闘病記「いのち」、連載開始です。

東北の太平洋岸が大地震と大津波に襲われたあの日、自分がいかに日本各地で起きた災厄について無知だったかを思い知らされた作家は、水辺の災害の記憶を辿る旅に出た――。佐伯一麦「山海記」


中篇 保坂和志「地鳴き、小鳥みたいな」

たびたびあなたに話してきたことだが僕は鎌倉が好きだ――、『朝露通信』の冒頭に登場するこの“あなた”と、僕は故郷を訪ねる。子供時代を過ごした山梨、歩けば歩くだけ、記憶と思考は入り混じる。保坂和志「地鳴き、小鳥みたいな」、味わい深い中篇です。


短篇 山田詠美

蛍を集めてその光で勉学に励んだ――わけではないが、裕福でない家庭を慮り、それなりに苦労して大学を卒業した蛍子。苦学は別に嫌じゃない、と考える彼女が、今まさに苦心して学んでいることは……!? 山田詠美「蛍雪時代」、ユーモアあふれる短篇です。


もくじ

〈新連載〉

いのち  瀬戸内寂聴

山海記  佐伯一麦

〈中篇〉

地鳴き、小鳥みたいな  保坂和志

〈特集 人生の意味?〉

対談

人生の意味  鷲田清一×大澤真幸

日本人の思想  松岡正剛×安藤礼二

チェーホフ的人生の意味  辻原 登×沼野充義

モンテーニュという生き方  保苅瑞穂×宮下志朗

愛と人生と寅さんと  山田洋次×滝口悠生

評論

幸福論  若松英輔

〈追悼 津島佑子〉

ファックスの書面  黒井千次

狐の仔、油揚げを喰ひたる事  川村 湊

その意味を  堀江敏幸

津島さんなき津島さんの道を進む  星野智幸

〈短篇〉

蛍雪時代  山田詠美

〈連載〉

鳥獣戯画〔3〕  磯﨑憲一郎

コンテクスト・オブ・ザ・デッド〔3〕  羽田圭介

オライオン飛行〔14〕  髙樹のぶ子

〈連作〉〔2〕

地上生活者 第六部 最後の試み  李恢成

〈連載評論〉

新・私小説論〔5〕  佐々木 敦

美と倫理とのはざまで カントの世界像をめぐって〔6〕 熊野純彦

鬼子の歌 近現代日本音楽名作手帖〔26〕  片山杜秀

〈世界史〉の哲学〔81〕  大澤真幸

〈連載〉

モンテーニュの書斎〔7〕  保苅瑞穂

現代短歌ノート〔72〕  穂村 弘

〈随筆〉

赤ワインと胡麻鯖茶づけ  ホンマタカシ

アレッチノとイチニのサン  舘野仁美

試される世界と世界に佇む小説家  李龍徳

鼻毛に背負わせすぎ  武田砂鉄

〈私のベスト3〉

スーツの不思議  山内ケンジ

どれだけ撮ったの  鈴木のりたけ

下川的三大「死にたい建築」  下川リオ

〈書評〉

妙なるリアリズム小説集(『楽しい夜』岸本佐知子・編訳)小山田浩子

存在と不在を読む(『その姿の消し方』堀江敏幸)柴崎友香

まさに「絶筆」と呼ぶべき言葉(『絶筆』野坂昭如)坪内祐三

一番はじめの小説(『デビュー小説論 新時代を創った作家たち』清水良典)高原 到

〈創作合評〉

阿部公彦+安藤礼二+江南亜美子

「報われない人間は永遠に報われない」李龍徳(文藝2016年春号)

「私のような軀」荻世いをら(すばる2016年3月号)

「移動販売車」髙村 薫(群像2016年3月号)