二十八年間の会社員生活を終えた小説家である「私」は、女友達と待ち合わせていた。喫茶店に到着するも彼女の姿はまだなく、コーヒーを飲んでいると長身の美人が現れて――。晴れて自由の身になったのだから、冒険をしないでどうする！　新連載、磯﨑憲一郎「鳥獣戯画」。平凡な男が人生の危険な隘路に踏み込む。

本を読む人間より、書きたい人間の方が多いなんておかしいだろう――!?　華やかだった頃の思い出にすがりながら生きる出版業界を風刺する、羽田圭介の超問題作がスタート！　新連載「コンテクスト・オブ・ザ・デッド」、日本にゾンビが出現した。

フランスの植民地で、初めてオートバイに乗ったひとりの女性。そのエピソ－ドを聞いた大学教員の景子は、かつて自分が経験した不倫の恋を思い出す――。大きな力に立ち向かう女性をいきいきと描く津島佑子の短篇「オートバイ、あるいは夢の手触り」、必読です。

黒井千次の連作短篇、第7回は「坂の下」。思想検事だった父の懺悔のような告白文につられ、発禁本の展示に向かった息子。そこで同じく検事を父親に持つ女性と出会って……。

工場長の娘である美津子は、ワガママな箱入り娘。あの時彼女の怒りを買った私は、大きな箱に閉じ込められて――。山田詠美「箱入り娘」、少女が感じる孤独の正体は？

受験も就活もなんとかこなしてきたあたしは、表向きは普通のＯＬ。でも家では、大好きな二次元の世界にどっぷり。じゅうぶん幸せなのに、なんだか感じるプレッシャー。ねえ、こんなあたしでも結婚できる？　『泡をたたき割る人魚は』でデビューした片瀬チヲルによる「草の婚約」、軽やかな中篇です。

少しずつ顔が似ていく夫婦の不気味さを描いた『異類婚姻譚』を刊行予定の本谷有希子と、家族もセックスもなくなる未来を想像した『消滅世界』を発表した村田沙耶香。十年をこえるキャリアを経て、同い年の二人が見る景色とは？　「結婚の不思議、夫婦の不気味」、既存の価値観が揺らぐ衝撃の対談です！