群像2015年8月号

女の友情見せてやる! 中篇180枚

綿矢りさ「ウォーク・イン・クローゼット」

28歳彼氏なしのOL早希は、男に合わせて服装を変え、デートを繰り返す毎日。でも出会うのは、既婚者だったり遊び慣れた男だったり、結果は散々。そんな中、幼なじみで人気モデルのだりあから、衝撃的な告白を受けて……!? 「ウォーク・イン・クローゼット」綿矢りさによるポップで毒っ気あふれる、女子の友情物語です。


特殊な“顔”を持つ女性を描く短篇

小池昌代「板の顔」

平凡な風貌の母親と、異様なまでに美しい父親から生まれた少女の顔は、獣のように毛深かった――。東京のホテルで清掃員として働く明敏な女性の数奇な人生とは。小池昌代「板の顔」、必読です。


連作 島本理生「雪ト逃ゲル」(前篇)、川上弘美、片岡義男

稼ぎの少ない夫と幼い息子を筆一本で支える「私」は、不倫相手を傷つけずにはいられない。だって、彼は私の代わりに傷ついてくれるから――。島本理生の神とキリスト教をめぐる連作、第三回は「雪ト逃ゲル」です。

僕とカイラは二人とも、「走査」をする人なんだ。自分と同じ能力を持つ新入りのカイラに特別な感情を抱いた僕だったが、一緒に暮らし始めたころから、その気持がゆっくり変わっていって……。川上弘美の連作「愛」、それはあまりにも美しく、恐ろしい。

作家の片岡義男は、一回り年下の仲井文武と、この20年で4回食事を共にしている。かつて編集者だった仲井をモデルにして、片岡は小説を書いたことがあった――。「ユー・アンド・ミー・ソング」片岡義男が小説という不可思議な世界を切り拓いた実験的連作が、遂に完結です!


デビュー小説論 第7回

清水良典「川上弘美『神様』」

筒井康隆をして「まさか大作家、老大家の手すさびではあるまいか」との疑念まで抱かせた短篇「神様」で、第一回「パスカル短篇文学新人賞」を受賞しデビュ-した川上弘美。実は学生時代、「小川項」や「山田弘美」名義でSF短篇を発表していた――!? 清水良典のデビュー小説論、第7回は「くまと「わたし」の分際――川上弘美『神様』」です。


『冥途あり』をめぐる対談

吉増剛造×長野まゆみ

広島に原爆が落ちた日、命は助かったものの、父は爆風でたくさんの小さなガラス片を背中に埋めこまれた――。“大年増”の娘が、父の死を見つめながら一族の記憶を呼び戻す「冥途あり」と、幼いころ通った湯屋の思い出を振り返る「まるせい湯」。2作を収録した長野まゆみの新刊『冥途あり』をめぐって、著者と詩人の吉増剛造が対談しました。層のような、光のような、驚異的な言語、とその文体を褒め称える吉増剛造が作中に見出したものとは? 対談「奇跡的な言葉のしぐさ――『冥途あり』をめぐって」、新刊とともにお楽しみください。


もくじ

〈中篇180枚〉

ウォーク・イン・クローゼット  綿矢りさ

〈短篇〉

板の顔  小池昌代

〈連作〉

雪ト逃ゲル(前篇)  島本理生

愛  川上弘美

ユー・アンド・ミー・ソング(完結)  片岡義男

〈対談〉

奇跡的な言葉のしぐさ――『冥途あり』をめぐって  吉増剛造×長野まゆみ

〈連載小説〉

虚人の星 最終回  島田雅彦

オライオン飛行〔6〕  髙樹のぶ子

我々の恋愛〔9〕  いとうせいこう

尻尾と心臓〔13〕  伊井直行

ビビビ・ビ・バップ〔20〕  奥泉 光

〈連載評論〉

鬼子の歌 近現代日本音楽名作手帖〔19〕  片山杜秀

〈世界史〉の哲学〔74〕  大澤真幸

〈連載〉

現代短歌ノート〔64〕  穂村 弘

〈随筆〉

快! 関係代名詞文体  大城立裕

黄金色の図書室  石井洋二郎

君の名は  森本あんり

カイコ当番  杉本真維子

〈私のベスト3〉

ぼくを魅了したDJたち  萩原健太

ビブリオテークに魅せられて  清宮伸子

ゆるキャラ以前  みうらじゅん

〈書評〉

平地の民のものがたり(『冥途あり』長野まゆみ)村田喜代子

「これを見ろ」と賢者は呟く(『映画時評 2012-2014』蓮實重彦)青山真治

爆弾を捨て手ぶらの凄み(『ぼくの短歌ノート』穂村 弘)長嶋 有

「日本」を揺さぶる異本(『女たち三百人の裏切りの書』古川日出男)佐藤康智

不穏な浦にわだかまる時間(『水死人の帰還』小野正嗣)栩木伸明

〈創作合評〉

中条省平+野崎 歓+大澤 聡

「家へ」石田 千(群像2015年7月号)

「軽薄」金原ひとみ(新潮2015年7月号)