第54回群像新人文学賞には1850(小説1721・評論129)篇の応募があり、

伊藤たかみ、絲山秋子、田中和生、長嶋有、松浦寿輝の5氏による

選考の結果、下記のように決定いたしました。

受賞作と受賞の言葉、選評は群像2011年6月号をお読み下さい。

【小説部門 当選作】
「美しい私の顔」
中納直子なかのなおこ

1981年三重県生まれ。

京都府在住。

中納直子   受賞のことば

Q:小説を書き始めたのはいつ、どのようなきっかけでですか?

A:考えている事を文章にまとめたらすっきりするだろうなというのがずっとあって、始まりと終わりのある話が書けるようになったのは三年ぐらい前だったように思う。

Q:群像新人賞に応募しようと思ったきっかけは何ですか?

A:名前を知っていたので応募したら二年前に最終候補に残ったので今年もまた応募した。

Q:どういう時間に執筆していますか?どんなときにアイディアが浮かびますか?

A:特にいつというのでもなく空いているときに書いている。アイディアはひとりで歩いたり用事をしたりしているときに浮かびやすい。

Q:好きな本(小説、評論)、好きな書き手(作家、評論家)を教えてください。

A:ロバート・ネイサンの「ジェニーの肖像」は子どもの頃に読んでから今でもたまに読み返す。いつ読んでも引き込まれる。

Q:これから群像新人賞に応募する人へメッセージをお願いいたします。

A:書きつくせそうにないものに取り組むようにはしている。なのでゴールには到達できないが、今回受賞できたのはそこに近づくためにとにかく粘った結果ではないか。


【評論部門 当選作】
「1%の俳句――一挙性・露呈性・写生」
彌榮浩樹みえこうき

1965年鹿児島県生まれ。

京都府在住。

彌榮浩樹   受賞のことば

Q:評論を書き始めたのはいつ、どのようなきっかけでですか?

 A:三十代前半から今まで、俳句を作りながら考えたことを結社誌などに色々と書いてきました。結社の仲間や京阪神の先輩俳人との質の高い交流に刺激されて書かされてきた、という感じがします。

Q:群像新人賞に応募しようと思ったきっかけは何ですか?

A:昨年、十数年間の俳句を句集というかたちでまとめたのをきっかけに、俳句とは何なのか、という総括を文章化したくなったのです。俳句をやらない人に向けて(群像に載るという前提で)書き、手応えを感じたので、応募しました。

Q:受賞作を書いたきっかけ、この題材を選んだ理由を教えてください。

A:俳句は、僕自身にとっての切実なテーマです。どんな本を読んでいても全て俳句とつながります。「俳句を」というよりも「俳句で」ものを考えている自分がいます。群像に応募するにはこれしか書けませんでした。唯一絶対のテーマだったのです。

Q:どういう時間に執筆していますか?どんなときにアイディアが浮かびますか?

A:仕事をしていますので、執筆の時間はとり難いですが、通勤電車の中で本を読みつつ線を引きメモを書き込み(アイディアの捕獲)、少しでも空いた時間があれば、それを喫茶店でノートにまとめる(アイディアの展開や組み合わせ)ことはしています。読書に押し出されて思考が進む、という感じです。

Q:好きな本(小説、評論)、好きな書き手(作家、評論家)を教えてください。

A:絞りに絞って。小説では、コ―マック・マッカーシー(黒原敏行訳)。評論では、片岡義男、小島信夫、村上春樹、保坂和志、高橋源一郎。哲学では、大森荘蔵、メルロ=ポンティ。

Q:これから群像新人賞に応募する人へメッセージをお願いいたします。

A:評論といえど、文章とは、結局、自分のことを書くものなのですから、内側を掘る作業と、それを読者に向けて発信するための工夫、これにつきます。例えば上に挙げた素晴しい先輩たちの営為を読み込み(真似し)ながら、じぶんにとって切実なテーマについて懸命に書く。そうして書かれた文章は(たとえ受賞を逃しても)自分を高めてくれるものになっているはずです。裏返しに言えば、そうした文章こそが読者からみた時に魅力のある「論」となるのではないでしょうか。

群像新人文学賞