群像2014年12月号(11月7日発売)
定価(税別):905円
新境地を開く意欲作 長野まゆみ「冥途あり」 | |
東京の下町に生きた父は、昭和20年、郷里の広島へ疎開していた。下戸で甘いものが大好きだった父、80歳を過ぎても小学校の同窓会に出かけていた父、8月6日を爆心地から2.5キロの距離で向えた父、背中に広島のガラス片が入ったまま逝った父――。長野まゆみ「冥途あり」、父の死を見つめる娘が呼び戻す一族の物語です。 |
超絶技巧の新連載 いとうせいこう「我々の恋愛」 | |
第17回「20世紀の恋愛を振り返る15ヵ国会議」最終日。世界を代表する恋愛学者たちが締めくくりとして選んだのは、日本で起きた事例だった。一本の留守番電話から始まった「20世紀最高の恋愛」とは果たして。いとうせいこうの超絶技巧が冴える「我々の恋愛」、連載開始です。 |
驚異の新人が描く魅惑の世界 宮下 遼「無名亭の夜」 | |
帝国の属州になってはや10年、領主の息子であった少年は、人の好い兵隊から帝国の文字と詩を教えられる。それは稀代の詩人誕生の瞬間だった――。気鋭の新人がはるか昔の異国を舞台に描く魅惑の物語、宮下遼「無名亭の夜」、必読です。 |
堂垣園江「浪華古本屋騒動記」 川上弘美「大きな鳥にさらわれないよう」 | |
大阪の名物古本屋の二代目である啓太は、父のライバルだった高津に、無能だボンだと馬鹿にされる日々。あるとき、奇妙な地図が見つかって……。堂垣園江「浪華古本屋騒動記」、”宝探し”に胸躍る一作です。 あたしはいつだって孤独だ。家でも、小学校でも。たいがいの人は嘘をつくし、あたしにはそれがなんとなくわかる――。川上弘美の連作、第5回は「大きな鳥にさらわれないよう」。物語のピースは、少しずつうまっていきます。 |
高橋源一郎「『死に支度』を読んで」 対談 平野啓一郎×大澤真幸 | |
瀬戸内寂聴が若き秘書・モナとの触れ合いから考える生と死――。「群像」に連載された感動長篇『死に支度』。92歳の著者が到達した渾身の一作に、「物語は終わらない」と名づけた随想で、高橋源一郎が熱い思いをつづります。 平野啓一郎『「生命力」の行方――変わりゆく世界と分人主義』刊行を記念し、大澤真幸との対談が行われました。対談「予測不可能な未来を生きる」、ポストモダニズム、資本主義、キリスト教……、刺激的なキーワードから現代を考えます。 |
〈中篇〉冥途あり 長野まゆみ〈新連載〉我々の恋愛 いとうせいこう〈中篇〉無名亭の夜 宮下 遼〈創作〉浪華古本屋騒動記 前篇 堂垣園江〈連作〉〔5〕大きな鳥にさらわれないよう 川上弘美〈随想〉物語は終わらない――瀬戸内寂聴『死に支度』を読む 高橋源一郎〈対談〉予測不可能な未来を生きる 平野啓一郎×大澤真幸〈連載小説〉尻尾と心臓〔6〕 伊井直行 虚人の星〔6〕 島田雅彦 ビビビ・ビ・バップ〔12〕 奥泉 光 〈連載評論〉チェーホフとロシアの世紀末〔8〕 沼野充義 鬼子の歌 近現代日本音楽名作手帖〔12〕 片山杜秀 〈連載〉映画時評 最終回 蓮實重彦 現代短歌ノート〔57〕 穂村 弘 | 〈随筆〉「怖い話」の話 平岡 敦 南カリフォルニアのティラノサウルス 矢口祐人 ミスター・サンクス 横山悠太 交渉 浅生 鴨 〈私のベスト3〉電信柱が出てくる話 中島京子 地球人ってステキ 吉村萬壱 酩酊三訓 清武英利 〈書評〉第一幕を終えたばかりの〈死に支度〉(『死に支度』瀬戸内寂聴)山折哲雄 ディストピアを悦ばしく生きる(『献灯使』多和田葉子)野崎 歓 善悪の彼岸を流れる水(『水声』川上弘美)松永美穂 やっぱりだまされた(『繁栄の昭和』筒井康隆)養老孟司 〈創作合評〉松浦寿輝+蜂飼 耳+宮下 遼 「偽詩人抄伝」四元康祐(群像2014年11月号) 「海賊のうた」いしいしんじ(新潮2014年11月号) 「泥棒」滝口悠生(群像2014年11月号) |