群像2014年11月号(10月7日発売)
定価(税別):905円
キリストの神を描く新連作短篇 島本理生「夜のまっただなか」 | |
「日本という国自体にキリスト教が必要だったときは、おそらくありません」、金井先生はそう言い切った――。大学の名前だけで神学科を選んだ琴子は、周囲の勧めでミスキャンパスに出場するものの、結果は八人中八位。恥ずかしさで逃げ帰る途中、タレント事務所につとめるという男性に声を掛けられ……。頼るもののないこの国で、不安をかかえ生きる少女たちと、それを利用する男たち。新連作短篇第一回「夜のまっただなか」。島本理生が新境地に挑みます。 |
詩の本質をえぐる意欲作 四元康祐「偽詩人抄伝」 | |
誰より詩を愛しているにもかかわらず、徹底的に“書く”才能がなかった吉本昭洋。大学時代に身に着けた語学力の助けもあり商社勤めとなった彼は、海外赴任先で華やかなる「詩祭」に出会う。そこで見つけたのは、日本では知られていない瑞々しい詩の数々だった――。「偽詩人抄伝」、詩人としても名高い四元康祐が、詩の本質を、ひとりの男の人生とともに描く意欲作です。 |
鼎談「批評とは何か」 鷲田清一×大澤真幸×熊野純彦 | |
「群像新人文学賞」から分離し、新たに創設された「群像新人評論賞」。その選考委員となった鷲田清一・大澤真幸・熊野純彦が、批評とは何か、新人賞応募作に期待することは何かを語ります。論文と批評の違い、特異性と普遍性、そして吉本隆明・柄谷行人が与えたインパクトとは。 |
黒井千次「からの椅子」 古井由吉「雨の裾」 | |
黒井千次の連作、第四回は「からの椅子」。父親を病院に送り届けた息子は、父の定位置であった安楽椅子にふと腰掛けてみる。そして導かれるように、天袋から見つけ出した父親の手記に向かうのだった――。 母親が癌で入院していたとき、私は毎日のように病院に通った。誰より熱心に母を看病してくれたのは、ろくな世話も出来ない男の私ではなく、私の「女」だった。古井由吉の連作「雨の裾」、必読です。 |
滝口悠生「泥棒」 山内マリコ「かわいい結婚」 | |
私たち夫婦のご近所さんであるアマチュア女性落語家・伊澤さん。姿をめっきり見なくなったと思っていたら、入れ替わるように、スケボーを走らせる若い男がうろつき出して……。滝口悠生「泥棒」、短篇「かまち」の続編です。 下着屋の店長としてバリバリ働いていたひかりは、義両親からの希望もあって、結婚をきっかけに家庭に入ることに。そこで初めて判明した驚愕の真実――家事って全然楽しくない! 「かわいい結婚」、新鋭・山内マリコが専業主婦の苦悩を生き生きと描きます。 |
〈新連作短篇〉夜のまっただなか 島本理生〈中篇〉偽詩人抄伝 四元康祐〈鼎談〉批評とは何か 鷲田清一×大澤真幸×熊野純彦〈連作評論〉〔2〕『ガリヴァー旅行記』と名前の消滅 武田将明〈創作〉からの椅子 黒井千次雨の裾 古井由吉泥棒 滝口悠生かわいい結婚 山内マリコ〈追悼 稲葉真弓〉お別れの挨拶――稲葉真弓さんへ―― 黒井千次半島の貴婦人 筒井康隆また会おうね 小池真理子猫の戦友 笙野頼子凛と伸びた背中 清水良典〈連載小説〉尻尾と心臓〔5〕 伊井直行 虚人の星〔5〕 島田雅彦 ビビビ・ビ・バップ〔11〕 奥泉 光 〈連載評論〉チェーホフとロシアの世紀末〔7〕 沼野充義 鬼子の歌 近現代日本音楽名作手帖〔11〕 片山杜秀 〈世界史〉の哲学〔67〕 大澤真幸 | 〈連載〉現代短歌ノート〔56〕 穂村 弘 映画時評〔71〕 蓮實重彦 〈随筆〉貸金庫と老人性しみ 林 京子 テレビ界というタコツボ 佐々木健一 愛でもなく、性欲でもなく 田中兆子 トレブリンカの入れ歯 大江麻衣 〈私のベスト3〉我が心の3怪豪 門馬忠雄 あの頃のようには、もう読めない 郷原佳以 我が愛しのフグたち 桝 太一 〈書評〉編者と書き手の幸福な呼応(『変愛小説集 日本作家編』岸本佐知子編)瀧井朝世 ファンタジーと寓話(『ファンタズマゴーリア』岡崎祥久)佐々木 敦 近代は小説によって作られた(『東大で文学を学ぶ ドストエフスキーから谷崎潤一郎へ』辻原 登)阿部公彦 到来する落差=実存(『小林秀雄とその戦争の時 『ドストエフスキイの文学』の空白』山城むつみ)浜崎洋介 〈創作合評〉松浦寿輝+蜂飼 耳+宮下 遼 「宰相A」田中慎弥(新潮2014年10月号) 「Identity Provider」岡本 学(群像2014年10月号) 「鯨や東京や三千の修羅や」古川日出男(すばる2014年10月号) |