群像2014年9月号(8月7日発売)
定価(税別):905円
痛みと優しさに満ちた中篇 小野正嗣「九年前の祈り」 | |
地元の言葉で言うところの「ガイコツ人」=外国人との間にできた息子・希敏と共に、故郷に戻ってきたシングルマザーのさなえ。彼女を苦しめるのは、息子のなかの「引きちぎられたミミズ」だ――。九年の時を経て重なり合う二人の女性の思い。小野正嗣「九年前の祈り」、痛みと優しさに満ちた〈母と子〉の物語です。 |
女性の孤独を描く飛躍作 朝比奈あすか「ザビエルが欲しい」 | |
新進IT企業クレイズ・ドットコムは昨年、ブラック企業だと散々ネットで叩かれた。採用リーダーに指名された志帆子は、その噂を払拭しつつ有能な人材を確保しようと、さまざまな手を尽くすが……。「ザビエルが欲しい」、注目の作家・朝比奈あすかが、採用側から“シューカツ”を描きます。 |
連作評論 小説の機能(1) 武田将明 | |
近代小説の原型とも呼ばれるダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』。その中には、「クロイツナーエル」、「ボブ」、「クルーソー・ロビンソン」といった変名がはびこっている――。武田将明「『ロビンソン・クルーソー』という名前」、名前を起点に、文学が人に体験させる世界のありようを解き明かす画期的評論です。 |
清水良典のデビュー小説論 第四回は高橋源一郎 | |
ひたひたと胸底を浸していく悲哀のリリシズムにあふれた、高橋源一郎のデビュー作『さようなら、ギャングたち』。妻子との別れや“書けない苦しみ”を描いた本作を、作家自身の年表とともに辿ります。清水良典のデビュー小説論、第四回は「優雅で感傷的な見者――高橋源一郎『さようなら、ギャングたち』」です。 |
特集 群像的文体練習Ⅱ 名〈迷〉訳のレッスン | |
「文体練習とは、翻訳である」――。2012年の特集「群像的文体練習」での鴻巣友季子の発言をきっかけに実現されることとなった、野崎歓・鴻巣友季子・谷崎由依の三名による「群像的文体練習Ⅱ 名〈迷〉訳のレッスン」。人気翻訳家が語る翻訳の魅力と誤訳の詩性とは? 「実践編」として、名作の冒頭や新タイトルの「文体練習」にも挑みました。 |
〈創作〉九年前の祈り 小野正嗣ザビエルが欲しい 朝比奈あすか〈連作評論〉〔1〕小説の機能(1)――「ロビンソン・クルーソー」という名前 武田将明〈連作評論〉〔4〕優雅で感傷的な見者――高橋源一郎『さようなら、ギャングたち』 清水良典〈特集〉群像的文体練習Ⅱ 名〈迷〉訳のレッスン 野崎 歓×鴻巣友季子×谷崎由依〈インタビュー〉「未闘病記」――難病と知らずに書いてきた 笙野頼子 聞き手・千石英世〈連作〉〔5〕夜明けの枕 古井由吉〈連載小説〉時穴みみか 最終回 藤野千夜 尻尾と心臓〔3〕 伊井直行 虚人の星〔3〕 島田雅彦 ビビビ・ビ・バップ〔9〕 奥泉 光 〈連載評論〉チェーホフとロシアの世紀末〔5〕 沼野充義 鬼子の歌 近現代日本音楽名作手帖〔9〕 片山杜秀 〈世界史〉の哲学〔65〕 大澤真幸 〈連載〉現代短歌ノート〔54〕 穂村 弘 映画時評〔69〕 蓮實重彦 | 〈随筆〉棘を秘めた真紅の薔薇 笙野頼子 老眼にトイレンズ 栩木伸明 噂のランチメイト症候群 白石公子 理系女子な日々の思い出 松崎有理 どうでもいい仏教 池口龍法 〈私のベスト3〉よい声に魅せられて 富士川義之 3Dプリンタ作品の愉悦 田中浩也 歌えばそこがぼくの場所 中川五郎 〈書評〉文学、あるいは笙野頼子という病(『未闘病記――膠原病、「混合性結合組織病」の』笙野頼子)清水良典 猫と言語と自分をめぐる冒険(『吾輩ハ猫ニナル』横山悠太)中条省平 理性/非理性の共犯関係を超える分業に向けて(『明治の表象空間』松浦寿輝)大澤真幸 七年の隔たり(『透明な迷宮』平野啓一郎)山城むつみ 〈創作合評〉吉増剛造+中条省平+長野まゆみ 「惑星」上田岳弘(新潮2014年8月号) 「献灯使」多和田葉子(群像2014年8月号) 「愛と人生」滝口悠生(群像2014年8月号) |