群像2014年5月号(4月7日発売)
定価(税別):905円
第8回大江健三郎賞 受賞作発表! | |
第8回大江健三郎賞が決定いたしました。2013年に刊行された「文学の言葉」を用いた作品の中から選ばれた受賞作は、英語、フランス語、ドイツ語のいずれかに翻訳されます。大江健三郎による選評「新しい作家が規範を作る――八年間の賞選考から」では、受賞作の瑞々しさが取り上げられています。 |
村田沙耶香「殺人出産」 笙野頼子「未闘病記」 | |
「10人産んだら、一人殺せる」。人口減少に歯止めが掛からなくなったいつかの日本。10人子供を産んだら、一人殺してもいい。そんな「殺人出産システム」が導入されて……。「殺人出産」、村田沙耶香にしか書けない衝撃作です。 膠原病であることが発覚した著者だったが、医師の助けと自分の努力で、「できること」は増えていく。信号のボタンが押せる。庭の手入れができる。音楽と綺麗な入浴剤を持ち込んで、お風呂はゆっくりと。私は「しな、ない」し、「なんでも/できる」のだ――。爽やかな感動に彩られた笙野頼子「未闘病記――膠原病、『混合性結合組織病の』」、完結です。 |
創作 川上弘美、古井由吉、川崎 徹 | |
「私」は十人で生まれたが、七人は育ちきらずに「終わった」らしい。残った「私」たちは、大きな母に育てられ――。少しふしぎな世界を描いた川上弘美の「水仙」。連作開始です。 古井由吉の連作、三回目のタイトルは「踏切り」。叔父はかつて、踏切りに飛び込もうとした男を止めたことがあるらしい。それはなんとも妙な経験で……。 CMプランナーの「わたし」は、海外で観光用馬車の馬が死ぬところを目撃する。そういえば子供の頃、同じように馬が倒れるのを見たことがあった。確か、学年で一番野球ができるムラカミが一緒だったはずだ――。川崎徹『ムラカミのホームラン』、懐かしいCMも登場するあたたかな物語です。 |
新連載評論 沼野充義「チェーホフとロシアの世紀末」 | |
チェーホフの作品に登場する子供たちの多くは不幸である。少年「ワーニカ」は見習い奉公先でひどい扱いを受け、短篇「ねむい」のワーリカは子守りと家事で睡眠不足になり赤ん坊を絞め殺す。チェーホフ自身が、辛い子供時代を過ごしていたことに由来するのだろうか。沼野充義による待望のロシア文学論「チェーホフとロシアの世紀末」、スタートです! |
『寂しい丘で狩りをする』刊行記念対談 辻原 登×滝田洋二郎 | |
強姦犯人が出所後、被害者を逆恨みし惨殺したという「日本たばこ産業OL殺人事件」。犯人は異常だが、もしかすると、男はみな何らかの暴力性を抱えているのかもしれない――。そのような思いから、この事件をモデルに『寂しい丘で狩りをする』を書いたという辻原登。映画へのオマージュも込められた本作をめぐって、『壬生義士伝』『おくりびと』で知られる映画監督・滝田洋二郎と対談しました。 |
〈中篇〉殺人出産 村田沙耶香〈連作短篇〉水仙 川上弘美〈新連載〉チェーホフとロシアの世紀末 沼野充義〈第7回大江健三郎賞発表〉新しい作家が規範を作る――八年間の賞選考から 大江健三郎〈創作〉未闘病記――膠原病、「混合性結合組織病」の(後篇) 笙野頼子ムラカミのホームラン 川崎 徹〈連作〉〔3〕踏切り 古井由吉〈対談〉小説と映画と人生――『寂しい丘で狩りをする』をめぐって 辻原 登×滝田洋二郎〈追悼〉大西巨人〈死〉と〈未生〉 保坂和志大西さんの眼 坪内祐三消滅の巨人 池田雄一〈連載小説〉ビビビ・ビ・バップ〔5〕 奥泉 光 時穴みみか〔8〕 藤野千夜 死に支度〔10〕 瀬戸内寂聴 パノララ〔14〕 柴崎友香 地上生活者 第五部 邂逅と思索〔27〕 李 恢成 〈連載評論〉鬼子の歌 近現代日本音楽名作手帖〔5〕 片山杜秀 皇后考〔20〕 原 武史 〈世界史〉の哲学〔61〕 大澤真幸 | 〈連載〉現代短歌ノート〔50〕 穂村 弘 映画時評〔65〕 蓮實重彦 〈随筆〉犬の死について 前田英樹 人間の営みとしての科学と芸術 岡ノ谷一夫 あの日の歌 東 直子 痛みについて 萱野稔人 〈私のベスト3〉「襞の街」京都 福嶋亮大 くねくね髪系男子 川口晴美 なぜ読めないか ナマエミョウジ 〈書評〉ゆがんだ男たちの生々しさ(『寂しい丘で狩りをする』辻原 登)池上冬樹 てんてんが素晴らしすぎる点について(『御命授天纏佐左目谷行』日和聡子)海猫沢めろん テクニシャンなデストロイヤー(『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』木下古栗)豊﨑由美 駄目な男、成長する女、そして猫(『猫の目犬の鼻』丹下健太)瀧井朝世 流民たちの系譜(『渡良瀬』佐伯一麦)紅野謙介 〈創作合評〉堀江敏幸+諏訪哲史+平野啓一郎 「カエルの聖母」四元康祐(文學界2014年4月号) 「湖のドライブ」北野道夫(文學界2014年4月号) 「悪夢じゃなかった?」山内マリコ(群像2014年4月号) |