群像2014年3月号(2月7日発売)
定価(税別):905円
女の性と老いを描く感動作 小池昌代「たまもの」 | |
一歳にもならないとき、山尾は実の父親に連れられて、わたしのところに来た。妻はこの子を産んだ直後に死んだんだ、と彼――わたしの元恋人――は言った。働いて、必ず、迎えに来るから。それきり、連絡はなかった。 十一歳になった、血のつながらない息子。彼との二人暮らしは、穏やかな喜びに包まれている――。小池昌代が静かに柔らかに描く、息子への愛と、男たちへの愛。感動長篇「たまもの」、一挙掲載です。 |
名手が描く“出逢い”の物語 片岡義男「3つの短篇」 | |
いつも行くカフェのウェイトレスと結婚することになった吉野。彼女は頭の形がよく、肘の裏に雰囲気があり、横顔が上品な「理想のウェイトレス」なのだ(「例外のほうが好き」)。 俳優の菅野は妹に頼まれ、彼女のベンツを東京から大分まで陸送することに。その途中、偶然の重なり合いから、ある女性に再会して――(「お隣のかたからです」)。 初めて入った喫茶店で、雇われマスターにスカウトされた柴田。「女もひとりつけるから」と紹介されたナオミと、元ロマン・ポルノ女優がやっている谷中の小料理屋へ向かうことに……(「ミッキーは谷中で六時三十分」)。 片岡義男による、三つの軽やかな“出逢い”の物語をお楽しみください。 |
対談 大澤真幸×大澤信亮 「キリスト教と資本主義」 | |
『<世界史>の哲学 東洋篇』を1月末に刊行した大澤真幸。<古代篇><中世篇>で論じられた「キリストの死」というミステリー、そして<東洋篇>で取り上げられた「宗教としての資本主義」について、気鋭の評論家・大澤信亮が切り込みます。「キリスト教と資本主義――『<世界史>の哲学』考」、『<世界史>の哲学 古代篇』、『中世篇』、『東洋篇』とともにお楽しみください。 |
デビュー小説論第二回 清水良典による村上龍論 | |
清水良典による「デビュー小説論」、第二回は、群像新人文学賞受賞作であり芥川賞受賞作でもある、村上龍の『限りなく透明に近いブルー』を取り上げます。《ロックとファックの時代》を鮮烈に描いた本作に見る「戦争」とは? 「音楽の終わりと『永久戦争』――村上龍『限りなく透明に近いブルー』」必読です。 |
連作小説第二回 古井由吉「死者の眠りに」 | |
「私」は、義母を見舞いに福島の病院まで日帰りで出かける。義母は呼びかけに答えないが、容体は安定しているように見える。ところが帰宅すると訃報が飛び込んできて――。古井由吉の連作小説、第二回は「死者の眠りに」です。 |
〈創作〉たまもの 小池昌代〈短編集〉3つの短篇 片岡義男例外のほうが好き/お隣のかたからです/ミッキーは谷中で六時三十分 〈連作〉〔2〕死者の眠りに 古井由吉〈対談〉キリスト教と資本主義――『<世界史>の哲学』考 大澤真幸×大澤信亮〈連作評論〉〔2〕音楽の終わりと「永久戦争」――村上龍『限りなく透明に近いブルー』 清水良典〈連載小説〉ビビビ・ビ・バップ〔3〕 奥泉 光 時穴みみか〔6〕 藤野千夜 死に支度〔8〕 瀬戸内寂聴 パノララ〔12〕 柴崎友香 地上生活者 第五部 邂逅と思索〔25〕 李 恢成 〈連載評論〉鬼子の歌 近現代日本音楽名作手帖〔3〕 片山杜秀 皇后考〔18〕 原 武史 〈世界史〉の哲学〔59〕 大澤真幸 〈連載〉現代短歌ノート〔48〕 穂村 弘 映画時評〔63〕 蓮實重彦 | 〈随筆〉胴突唄の声と体 細馬宏通 小樽美しすぎ 雪舟えま カリフォルニアの青い「LIFE」 川崎大助 遠い関東平野 北野道夫 〈私のベスト3〉ボクの珍記録 水道橋博士 カフカと安全性の装置 市野川容孝 T・スコットとD・ワシントン 三宅 唱 〈書評〉絢爛たる語りの業(わざ)(『爛』瀬戸内寂聴)尾崎真理子 真実の幻想(『香夜』髙樹のぶ子)藤沢 周 我々は手分けしてこの本を読まなければならない(『問いのない答え』長嶋 有)福永 信 戦後の時間を綴じる物語の糸(『めぐり糸』青山七恵)清水良典 紅の物差し、白の物差し(『純粋異性批判』中島義道)酒井順子 〈創作合評〉稲葉真弓+苅部 直+藤野可織 「形見」川上弘美(群像2014年2月号) 「韋駄天どこまでも」多和田葉子(群像2014年2月号) 「ニューヨーク、ニューヨーク」津島佑子(群像2014年2月号) 「地獄」津村記久子(文學界2014年2月号) 「匿名」藤谷 治(文藝2014年春号) 「透明な迷宮」平野啓一郎(新潮2014年2月号) |