群像2013年9月号(8月7日発売)
定価(税込):950円
長篇一挙掲載260枚 西 加奈子「舞台」 | |
自意識に苛まれる青年・葉太は、単身ニューヨーク旅行の初日、セントラルパークで全財産の入った鞄を盗まれてしまう。他人の目を必要以上に気にして生きてきた彼は、「初日で盗難(笑)」なんて恥ずかしいと誰にも相談できない。着の身着のままの街歩きが始まる――。西加奈子『舞台』、可笑しくも切ない「自分探し」の物語です。 |
短篇 片岡義男「吉祥寺ではコーヒーを飲まない」 | |
36歳の上条安奈には、俳優をしている3歳年下の弟・修司がいる。修司はジャズをやっている姉を敬愛しており、しょっちゅう電話を掛けてくる。ある日、弟が恋人と別れたことに気づいた安奈は、吉祥寺で弟の元恋人とコーヒーでも飲もうかとスマートフォンを取り出して……。片岡義男の「吉祥寺ではコーヒーを飲まない」、不思議な“女子会”を描いた短篇です。 |
連作小説第6回 町田 康「ホサナ」 | |
「私」は銀行に向かう道すがら、敗北感について考えている。昨日までの7日間に7度、50万円ずつを舵木禱子が指定する口座に振り込んだからだ。敗北感に打ち震える「私」に、犬は哀れむような目を向けて言った。「もう、日本くるぶしのことは考えなくていいよ」――。第6回を迎える町田康の連作小説「ホサナ」、必読です! |
短篇 中納直子 吉田大助「本谷有希子論」 | |
中納直子の短篇「おにんぎょさん」は、30代独身・カフェオーナーの「私」が主人公。大学生との「恋愛ごっこ」に飽きて、ダッチワイフならぬダッチハズバンドを買ってしまって……!? 評論は本谷有希子論。『嵐のピクニック』で大江健三郎賞を受賞し、『自分を好きになる方法』でさらなる飛躍を遂げた本谷。デビュー時から親交のあるライター・吉田大助が、「誤解」と「解放」というキーワードから、本谷文学を紐解きます。 |
「存在しない小説」最終回 いとうせいこう「オン・ザ・ビーチ」 | |
いとうせいこう「存在しない小説」がついに完結。今から10年ほど先、アドリア海を望むリゾートホテルのバルコニーで、77歳の「私」は若い警備員のヤコブ・ボバンを眺めている。彼はほとんど一日中「私」の方を見張っていて、ノートに何かを書きつけている。そのノートを盗み読んだ「私」は、内容にとりつかれてしまい……。 |
〈長篇260枚〉舞台 西 加奈子〈連作小説〉ホサナ〔6〕 町田 康〈短篇〉吉祥寺ではコーヒーを飲まない 片岡義男おにんぎょさん 中納直子〈評論〉本谷有希子の「誤解」と「解放」 吉田大助〈追悼 高橋たか子〉高橋たか子の「精神」 中島義道高橋たか子の思い出 鈴木 晶〈連載小説〉存在しない小説 最終回 いとうせいこう 死に支度〔2〕 瀬戸内寂聴 寂しい丘で狩りをする〔8〕 辻原 登 屋根屋〔11〕 村田喜代子 地上生活者 第五部 邂逅と思索〔19〕 李 恢成 夜は終わらない〔23〕 星野智幸 〈連載評論〉皇后考〔12〕 原 武史 〈世界史〉の哲学〔54〕 大澤真幸 | 〈連載〉創作の極意と掟〔9〕 筒井康隆 現代短歌ノート〔42〕 穂村 弘 映画時評〔57〕 蓮實重彦 〈随筆〉汚された珈琲茶碗 柴田 翔 ハンブルク、手作りの映画祭 内藤 誠 深い淵 小川 恵 夜と熱 渡邉十絲子 〈私のベスト3〉動けなくなる動物 小山田浩子 読み・書き・自己言及 結城 浩 夏の夜想曲 北川智子 〈書評〉世界中のリンデのために(『自分を好きになる方法』本谷有希子) 青山七恵 読むことと、書くこと(『銀河鉄道の彼方に』高橋源一郎) 佐藤康智 「考えるな、見よ!」(『往古来今』礒﨑憲一郎) 大澤 聡 ブツなき内省のゆくえ(『新世紀神曲』大澤信亮) 山城むつみ 〈創作合評〉吉増剛造+中条省平+長野まゆみ 「風」青山七恵(文藝2013年秋号) 「ピエタとトランジ」藤野可織(群像2013年8月号) 「激越!!プロ野球県聞録」青木淳悟(すばる2013年8月号) |