群像2013年6月号(5月7日発売)
定価(税込):950円
第56回群像新人文学賞発表! 小説部門 当選作「鶏が鳴く」 | |
第56回群像新人文学賞が決定いたしました。小説部門の当選作は、波多野陸「鶏(にわとり)が鳴く」。人を見下すのが常の「俺」。深夜、いけ好かない友人の家に忍び込み、目撃した「秘密」とは――。男子高校生二人による、一晩の濃密な対話劇です。 |
評論部門 優秀作は2作受賞 | |
評論部門は優秀作2本です。1本目は、西欧規範で裁断的と捉えられがちな中村光夫を再考する、木村友彦「不可能性としての〈批評〉――批評家 中村光夫の位置」。 2本目は、米国同時多発テロと地下鉄サリン事件への発言から、吉本隆明の90年代以降の思想を探る、多羽田敏夫の「〈普遍倫理〉を求めて――吉本隆明「人間の『存在の倫理』」論註」。新しい才能の誕生を、ぜひご確認下さい。 |
没後30年の新発見! 寺山修司 未発表戯曲 | |
今年で没後30年を迎える寺山修司が、「天井桟敷」結成前の20代の時に執筆した未発表戯曲が発見されました。ミュージカル「青い種子は太陽のなかにある」の草稿と思われる台本で、寺山修司の作品はほとんどが出版されているため、未刊行の作品が見つかるのは極めて珍しいことです。ある政治家がホームレスのためのアパートを建てようと計画。順調に作業は進んでいたのだが、ある事故が起こり……。若く青い「恋」と「正義」を描いた瑞々しい作品です。 |
3つの連作 片岡義男 「酔いざめの三軒茶屋」 | |
片岡義男の「3つの連作」の3本目は「酔いざめの三軒茶屋」。料理人の麻紀子と翻訳家のミルカは、偶然喫茶店で出会った作家の久保寺と編集者の津村と連れ添って、カレ-ライスを食べに「下りの各駅で六つ目」の駅へ。ウルトラマンが見守るその場所で交わされるのは、懐かしい漫画やアニメの話。やがて三人と別れた麻紀子は、ひとり三軒茶屋へ……。下北沢から三軒茶屋までの道のりを味わい深く描いた短篇です。 |
ついに連載完結 津村節子、田中慎弥、保坂和志 | |
今月、3つの連載小説が最終回を迎えます。1本目は、亡き夫との思い出の地である岩手県の田野畑村を、切々と描いてきた津村節子「三陸の海」。震災後の田野畑をようやく訪れることのできた「私」は、美しい海に臨む村の姿を見て、ある思いを胸に抱く――。 2本目は、原稿用紙1000枚を超える大長篇となった田中慎弥「燃える家」。祭りの日、徹は実父との対決のときを迎え――。 3本目は、2年半を超える長期連載がついに完結する保坂和志「未明の闘争」。友達と野良猫たちの長く切なくあたたかな交流の先には――。 |
〈第56回群像新人文学賞発表〉〈小説部門当選作〉 鶏(にわとり)が鳴く 波多野 陸〈評論部門優秀作〉 不可能性としての〈批評〉――批評家 中村光夫の位置 木村友彦〈普遍倫理〉を求めて――吉本隆明「人間の『存在の倫理』論註」 多羽田敏夫受賞のことば 選評 青山七恵 阿部和重 安藤礼二 奥泉 光 辻原 登 〈未発表戯曲〉青い種子は太陽のなかにある 寺山修司解題「寺山ミュージカル」が意味するもの 大井浩一 〈3つの連作〔3〕〉酔いざめの三軒茶屋 片岡義男〈連載小説〉三陸の海 最終回 津村節子 燃える家 最終回 田中慎弥 未明の闘争 最終回 保坂和志 存在しない小説〔3〕 いとうせいこう パノララ〔4〕 柴崎友香 屋根屋〔9〕 村田喜代子 晩年様式集〔15〕 大江健三郎 地上生活者 第五部 邂逅と思索〔16〕 李 恢成 夜は終わらない〔20〕 星野智幸 | 〈連載評論〉皇后考〔9〕 原 武史 〈世界史〉の哲学〔51〕 大澤真幸 〈連載〉創作の極意と掟〔6〕 筒井康隆 現代短歌ノート〔39〕 穂村 弘 映画時評〔54〕 蓮實重彦 〈随筆〉雨の柱廊――イタリアの中のロシア 沼野恭子 “世界一”の大学入試 大栗博司 趣味は回文です。 神 慶太 〈私のベスト3〉海外で受ける治療 岡崎玲子 いつか実現したいこと 前野隆司 家庭内三体問題 北野勇作 〈書評〉さくら丸コミュニティにとっての「郷土」と「国家」(『双頭の船』池澤夏樹) 中村和恵 彼女と彼は「なにも恐くなかった」(『憤死』綿矢りさ) 吉田大助 〈創作合評〉島田雅彦+大澤信亮+谷崎由依 「ショッピングモールで過ごせなかった休日」岡田利規(新潮2013年5月号) 「自分を好きになる方法」本谷有希子(群像2013年5月号) 「砂漠ダンス」山下澄人(文藝2013年夏号) |