群像2012年11月号

新連載小説

津村節子「三陸の海」

津村節子による新連載小説「三陸の海」が始まりました。夫、吉村昭と共に長年訪れてきた村を襲った津波――。三陸への思いはとめどなく溢れ、作家を突き動かす。


中篇210枚

小野正嗣「獅子渡り鼻」

その海辺の小さな集落で、少年は生き直す。哀しみを包む大きな力に導かれて――。子どもの心の傷を濃密な文章で描いた「獅子渡り鼻」小野正嗣の最新作です。


短篇 長野まゆみ、日和聡子、古谷利裕、吉田知子

葬儀社に勤める主人公のもとにやって来た若い女性客。自殺するので部屋の後片付けを頼みたいと言うが……長野まゆみ「×(閉じる)」。決してついて行ってはいけない、そう知りながら彼女は影に導かれ海辺の小屋に辿り着く――新鋭・日和聡子の短篇「行方」古谷利裕「セザンヌの犬」は、セザンヌの静物画に想を得た実験小説。見知らぬ人から突然「拝ませてください」と請われた主婦の、奇妙な日々を描いた吉田知子「拝む人」も必読です。


対談 関川夏央×苅部 直

ともに「群像」で連載された作品、『東と西 横光利一の旅愁』『安部公房の都市』をめぐって、関川夏央苅部直が対談。横光と安部、二人の作家が生きた時代は、作品にどう刻まれているのでしょうか。


特集「群像的文体練習」

穂村 弘×鴻巣友季子×福永 信

「文体」の正体とは? 「文章」や「書き方」とは何が違うのか? 歌人・穂村弘、翻訳家・鴻巣友季子、作家・福永信が、「文体」の謎を語り尽くします。三人が試みた、面白くって奇想天外な<8つの文体練習>も必読です!


もくじ

〈新連載小説〉

三陸の海 津村節子

〈中篇210枚〉

獅子渡り鼻 小野正嗣

〈創作〉

行方 日和聡子

セザンヌの犬  古谷利裕

拝む人 吉田知子

〈特集 群像的文体練習〉

穂村 弘×鴻巣友季子×福永 信

〈連作短篇〉〔7〕

×(閉じる)  長野まゆみ

〈連作評論〉〔3〕

折口信夫の古代 安藤礼二

〈連載小説〉

屋根屋〔4〕   村田喜代子

地上生活者 第五部 邂逅と思索〔9〕   李 恢成

晩年様式集(イン・レイト・スタイル)〔10〕   大江健三郎

夜は終わらない〔15〕   星野智幸

燃える家〔25〕   田中慎弥

未明の闘争〔37〕   保坂和志

〈連載評論〉

皇后考〔3〕 原 武史

フランス文学と愛〔10〕   野崎 歓

〈世界史〉の哲学〔44〕    大澤真幸

〈連載〉

現代短歌ノート〔32〕   穂村 弘

「生」の日ばかり〔44〕   秋山 駿

映画時評〔47〕   蓮實重彦

〈随筆〉

余計なお世話  池田清彦

氷枕  平松洋子

牛窓の夢うつつ  想田和弘

三十五歳、問題  樺山三英

〈私のベスト3〉

日本語に導入しなくてもいい英語表現  マイケル・エメリック

ウェブ記事と本  木下古栗

誤読  能町みね子

〈書評〉

見出された痛み(『奇貨』松浦理英子)   津村記久子

非・劇的な笑いの蓄積(『佐渡の三人』長嶋 有)   佐藤康智

「神秘的な部分」の現在的表現(『スリリングな女たち』田中弥生)   富岡幸一郎

渋面で描く近代日本像(『東と西――横光利一の旅愁』関川夏央)   片山杜秀

〈創作合評〉

高橋源一郎+富岡幸一郎+海猫沢めろん

「ファンタズマゴーリア」岡崎祥久(群像2012年10月号)

「jiufenの村は九つぶん」谷崎由依(すばる2012年10月号)